| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第72回全国大会 (2025年3月、札幌) 講演要旨
ESJ72 Abstract


一般講演(ポスター発表) P1-025  (Poster presentation)

イネの根細胞壁表面の官能基におけるFe吸着特性【A】【O】
Iron Adsorption Characteristics of Functional Groups on the Surface of Rice Root Cell Walls【A】【O】

*小川弥玲(酪農学園大学), 川村美紗妃(酪農学園大学), 畑中朋子(酪農学園大学), 阿江教冶(龍谷大学), 保原達(酪農学園大学)
*Mirei OGAWA(Rakuno Gakuen University), Misaki KAWAMURA(Rakuno Gakuen University), Tomoko HATANAKA(Rakuno Gakuen University), Noriharu AE(Ryukoku University), Satoru HOBARA(Rakuno Gakuen University)

 植物は栄養を獲得するために、様々な機能を持っている。その中の一つに、植物の根による鉱物風化作用がある。植物の根は、根圏で土壌中の一次鉱物や粘土鉱物を風化し、遊離した栄養素を吸収する。植物の鉱物風化作用は、主に根からの有機酸の放出などにより起こることが知られている。近年、一部の植物の根では、根細胞壁表面の官能基特性が鉱物風化をもたらしていることが示唆されている。本研究では、イネの根細胞壁表面の、土壌鉱物に作用しうる官能基特性について明らかにすることを目的とし、イネについて、根表面の陽イオンの吸着特性を調べ、同じイネ科であるトウモロコシと比較した。イネは研究で主に用いられている品種である日本晴(Oryza sativa L. cv. Nipponbare)を用い、それを水稲でポット栽培し、トウモロコシは味来早生130(Zea mays cv. Mirai Wase 130)を用い、土耕でポット栽培した。実験は根表面の陽イオン吸着容量試験(CAC試験)、根表面のFe3+脱着試験を行った。根を回収したのち、根表面に付着した陽イオンを剥がし、特定の陽イオンを吸着させたものを根表面サンプルとした。CAC試験は、Na+、Ca2+、Fe3+がどの程度吸着しているかを評価した。根表面のFe3+脱着試験は、濃度の異なる3種類のキレート剤を用いて、根表面のFe3+の吸着特性を評価した。その結果、まずCAC試験では、イネ、トウモロコシともにFe3+が根に多く吸着した。また、根表面のFe3+脱着試験の結果から、イネの根では、クエン酸でFe3+が最も吸着された。これらのことから、イネの根表面の官能基はクエン酸と似たキレート力を持ち、Fe3+は静電吸着だけではなく、根表面とキレート結合している可能性が示唆された。こうしたイネ、トウモロコシの根表面の官能基は、土壌鉱物中のFe3+と強く結合することで風化を促している可能性がある。さらに、根表面のFe3+に関する官能基特性は、栽培される培地の状態に依存する可能性がある。


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