| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第72回全国大会 (2025年3月、札幌) 講演要旨 ESJ72 Abstract |
一般講演(ポスター発表) P1-027 (Poster presentation)
調査地である鉱山跡地では土壌中に高濃度の重金属が残存しており, 植物にストレスを与えやすい環境となっている. 本研究の対象植物であるミゾソバは, 調査地の沼に自生する湿性植物であり, 何らかの重金属耐性機構を有していると考えられた. また, 根に生息する内生細菌は金属元素とキレート結合するsiderophoreを産生し, 宿主植物の金属耐性を増強させることが報告されている. 各種分析の結果, ミゾソバは生根及び枯死根において高濃度のFeを蓄積していることが確認された. 枯死根の発生がFeストレスに起因すると考えると, 生根と枯死根に生息する内生細菌ではsiderophoreの産生能が異なると推測される. 以上より本研究では, 1)生根及び枯死根に生息する内生細菌を分離し, 2)そのsiderophore産生能を比較することで, Fe耐性を有する生根における内生細菌の化学的機能について明らかにすることを目的とした. 2023年8月において最も多くの枯死根が確認された時期に, 生根及び枯死根から内生細菌を分離し, そのsiderophore産生能を解析した. その結果, 生根より分離された内生細菌237菌株のうち, siderophore産生能を示した内生細菌は166菌株 (70.0%)であった. 一方, 枯死根より分離された内生細菌85菌株のうち, siderophore産生能を示した内生細菌は23菌株 (27.1%) であった. 本植物の根に生息する内生細菌は生根と枯死根においてsiderophore産生能が異なり, siderophore産生能を有する内生細菌は枯死根と比較して生根に多く生息していることが確認された. 以上より, 本植物の生根におけるFe耐性機構に, siderophoreを産生する内生細菌が関与している可能性が考えられた.