| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第72回全国大会 (2025年3月、札幌) 講演要旨 ESJ72 Abstract |
一般講演(ポスター発表) P1-032 (Poster presentation)
ウズベキスタン中央部に位置する内陸性乾燥気候に属するキジルクム砂漠は、年降水量が46~176mm(2000~2023年)と極めて少ない地域であるが、点在する塩性低湿地にはC3植物であるTamarix hispidaやC4植物であるHaloxylon ammodendronなどの深根性木本種が分布している。本研究では、これら2樹種の個葉ガス交換特性の塩分ストレスに対する応答を解明するため、キジルクム砂漠南東部に設けた11×13kmの調査区内の異なる11地点に自生するT. hispida 45個体とH. ammodendron 50個体を対象とし、C3植物において気孔コンダクタンスに対する光合成速度の比である内的水利用効率を反映する葉の有機物の炭素安定同位体比(δ13C)を測定した。また、C3、C4植物のいずれにおいても蒸散量を反映する葉の酸素安定同位体濃縮(Δ18O)を算出するため、葉の有機物と枝内水の酸素安定同位体比(δ18O)を測定した。これらの値と各地点の土壌深度0~100cmの無機イオン濃度との関係を調べた結果、T. hispida の葉のδ13Cは土壌中のアニオン(Cl, SO4)とカチオン(Ca, Mg, Na,K)の含有量が多く、電気伝導度 (EC) が高いほど高くなる傾向を示した。一方、葉のΔ18Oは土壌中の各無機イオン含有量と明確な関係を示さなかった。これにより、T. hispida は土壌浅層の塩分濃度の上昇に対し内的水利用効率を上昇させること、それは気孔の閉鎖によるものではないことが示唆された。一方、H. ammodendronでは、葉はδ13CとΔ18Oのいずれも土壌中の無機イオン濃度との間に明確な関係を示さなかった。