| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第72回全国大会 (2025年3月、札幌) 講演要旨
ESJ72 Abstract


一般講演(ポスター発表) P1-033  (Poster presentation)

デジタル技術を用いた植物生態現象の観測【O】
Ecological monitoring of plants using information commucation technology【O】

*宮沢良行(九州大学)
*Yoshiyuki MIYAZAWA(Kyushu University)

植物の基本的な活動である光合成や関連する諸現象は、植物を取り巻く環境の変化に応答して日々刻々と変化する。これら現象の環境応答は種ごとに特有であり、その応答は特定の生息地への進化適応を理解し、気候変動に晒された時の生態系の振る舞いを予測するためのカギとなる情報でもある。多くの研究が多大な予算と人員、時間を投じて植物生理特性の計測値の収集に取り組み、今も収集を進めている。ただ計測の多くは、研究者の立ち会いを必要とする半手動の手法を採ることから、計測者への労力・経費面での高負担問題だけでなく、突発的に発生する生理現象に立ち会えない・その間のデータを取りこぼす、など、計測精度面での課題も抱えている。生理現象の計測には既存の商用機器が不可欠と思われがちだが、簡易な仕組みで計測される生理現象も多く、近年のICTの発展によってこうした計測を阻む障壁はより低くなっている。本発表では、比較的早期に自動観測が可能となった生理現象である蒸散を題材に、「いつ・どこ・いくつでも計測可能」な計測システムを開発し、実践した結果を報告する。適切な部品を選定することで、入手が容易で安価な機材を材料にしても、商用計器を用いた既存研究と同水準の計測が可能であることが実証された。省電力の計測手法を採ったことで、小型の太陽光電力源とセンサー・受信記録器からなる小規模の計測システムを樹木個体ごとに設置することが可能となり、試験地内に点在する多数の樹木を対象とした計測が容易となった。だが多数の機器からのデータ収集の労力が増し、計測状況の確認も困難となった。そこで各システムからの計測値のオンライン送信と、受信データを表示するスマートホン対応のウェブアプリを開発することで、遠隔試験地での計測状況のリアルタイム確認を可能にし、より簡易で制限の小さい高精度な蒸散計測が可能となった。当日は他の生理現象の計測についても紹介する。


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