| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第72回全国大会 (2025年3月、札幌) 講演要旨
ESJ72 Abstract


一般講演(ポスター発表) P1-037  (Poster presentation)

ヒメツリガネゴケは長期宇宙滞在を実現可能にするのか?-火星レゴリスでの栽培実験-【A】【O】
Can Physcomitrella patens make long term space staying possible? -Cultivation experiments on the Martian regolith -.【A】【O】

*尾﨑亮太(京都工芸繊維大学), 河原快明(北海道大学), 髙田海悠(北海道大学), MAENGChang-Hyun(北海道大学), MARCELBeier(北海道大学), 藤田知道(北海道大学), 半場祐子(京都工芸繊維大学)
*Ryota OZAKI(Kyoto Institute of Technology), Yoshiaki KAWAHARA(Hokkaido univ.), Miyu TAKATA(Hokkaido univ.), Chag-Hyun MAENG(Hokkaido univ.), Beier Pascal MARCEL(Hokkaido univ.), Tomomichi FUJITA(Hokkaido univ.), Yuko HANBA(Kyoto Institute of Technology)

人類が宇宙ステーションや月・火星などの宇宙環境で長期滞在するためには、閉鎖的生命維持システムが必要となる。植物は光合成によって二酸化炭素を吸収し酸素を供給するため、人類の宇宙滞在にとって重要である。コケ植物は小型で、宇宙環境の限られた空間での栽培に有利であり、植物に対する宇宙環境の様々な影響評価に適している。本研究室の先行研究により過重力下において、葉緑体肥大と光合成速度や成長量の増加が報告されている(Takemura et.al. 2017) 。本研究では更なる宇宙環境ストレスの影響を探るため、乾燥ストレスと土壌環境ストレスの2つの環境ストレスに着目した。宇宙空間は大気が存在せず、乾燥状態が常態化している。多くの被子植物にとって致命的である乾燥ストレスによって、蘚苔類であるコケ植物はどのような影響を受けるのかを調査した。また植物の持続的な栽培には土壌が必要だが、地球からの輸送はコストと危険性の観点から望ましくなく、地球外惑星の表土である「レゴリス」の使用が考案された。レゴリス栽培による影響はコケ植物では報告されていない。本研究では形態観察、光合成速度測定を行い、コケ植物への土壌環境ストレスの影響を探ることを目的とした。本実験ではBCDあるいはBCDAT寒天培地にて栽培したヒメツリガネゴケ (Physcomitrium patens) 野生型 (WT) の原糸体および茎葉体を使用した。また火星レゴリスの模擬物質 (以下MMS-2) に植え継ぎ、グロースチャンバーで約30日間栽培したものを使用した。結果として乾燥ストレス実験では乾燥開始後、時間経過とともに光合成速度が低下した。また再浸潤によって乾燥前の80%の光合成速度まで回復した。葉緑体については縮小が確認できた。MMS-2 栽培実験ではMMS-2で栽培したヒメツリガネゴケは光合成速度が低下した。また葉緑体の個数、サイズともに減少が確認できた。発表ではこれらの結果について報告する。


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