| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第72回全国大会 (2025年3月、札幌) 講演要旨 ESJ72 Abstract |
一般講演(ポスター発表) P1-045 (Poster presentation)
光は光合成の駆動力であるが、そのエネルギーゆえに、光阻害と呼ばれる光合成器官の損傷と植物の生育低下を引き起こす。光阻害による光合成器官の損傷は低温で増加すると考えられている。これは、光合成活性も光阻害の修復速度も低温環境で低下するためである。植物は常に光阻害にさらされており、修復を行うことで光合成活性を保っている。そこで、本研究は、低温に生息する植物ほど、特に低温での光阻害耐性が高い個体が自然選択されているのではないかと考えた。この仮説を調べるため、緯度や標高が異なる世界各地で収集された298のシロイヌナズナエコタイプを用いて、光阻害速度、光阻害修復速度、チラコイド膜の各種活性を調べた。光阻害耐性と各エコタイプの由来地の気候環境との関係を調べたところ、22℃で生育後、12℃で3日間低温順化処理を行なった個体では、5℃における光阻害修復速度と由来地の平均気温との間に有意な負の相関が見られた。一方、低温順化処理を行わなかった個体ではこの相関はみられなかった。この結果は、光阻害耐性の低温順化能力が、特に寒冷地域での植物の分布に影響することを示している。