| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第72回全国大会 (2025年3月、札幌) 講演要旨 ESJ72 Abstract |
一般講演(ポスター発表) P1-056 (Poster presentation)
モミ(Abies firma) の幼木においては光環境の差によってシュートの伸長期間や伸長量が変化し、それにより樹形が変化することが知られている。しかしながら、十分な光量が存在する開地においても個体内および個体間双方でシュートの伸長速度や伸長期間、ひいては最終伸長量に違いが見られることがある。本研究では、モミのシュート伸長様式における基礎データの拡充、ならびにモミの形態的特徴によるシュート伸長様式の説明を主な目的として調査を行った。
京都市内の開地において生育する4年生モミ32個体の2024年生シュートのうち、頂芽および頂芽と基部を共有する側芽のそれぞれのシュート長をおよそ1週間に1度計測し、シュート伸長の経時変化を求めた。
全てのシュートの伸長様式はゴンペルツ型成長曲線で非常によく近似でき、シュートの最終伸長量、伸長速度の最大値や伸長期間の長さを曲線のパラメータで表現することができた。シュートの最終伸長量は伸長速度の最大値と伸長期間の長さとの積に比例すること、伸長速度が最大となる日付が遅いほど伸長期間が長いこと、伸長前の冬芽長が大きいほど伸長速度の最大値が大きいことなどがわかった。これらより、シュートの最終伸長量に影響する要因として、測定可能な形態的な量や成長曲線のパラメータとの関係が明らかになった。
一方で、伸長開始・終了時期ともに頂芽シュートは側芽シュートよりも遅かった。そのうえ、頂芽シュートでは伸長終了時期が遅いほど最終伸長量が大きかったのに対し、側芽シュートでは伸長開始時期が早いほど最終伸長量が大きいという違いがあった。また、すべての個体で頂芽シュートよりも側芽シュートの最終伸長量が大きかった。このように、同一基部から発生するシュートであっても頂芽シュートと側芽シュートにおいて伸長様式の決定メカニズムは同一とは限らないことも示唆された。