| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第72回全国大会 (2025年3月、札幌) 講演要旨 ESJ72 Abstract |
一般講演(ポスター発表) P1-063 (Poster presentation)
砂浜の喪失は世界的に進行しており、海浜植物を含めた沿岸生態系の劣化への懸念が高まっている。離岸堤の設置は海浜植生の保護、回復に有効とされているが、多くの研究が内湾性海浜を対象としており、より強い波浪攪乱を前提とし、種組成や植生が異なる外洋性海浜植生に対する離岸堤の影響は十分に検討されていない。本研究では、外洋性海浜における離岸堤設置が、①内陸性草本の侵入②安定帯に特有な海浜性草本の増加③一年草帯の出現の三つを促進するか検討した。
調査地は千葉県旭市、いすみ市の、離岸堤のある海浜(あり区)とない海浜(なし区)が隣接しているサイトとした。汀線に垂直な測線上に設けた各地点に調査方形区を設置して、被度、電気伝導度(EC)、土壌pH、中央粒径値(D50)、粘土・シルト率、汀線距離、比高を記録した。被度をNMDSで序列化し、傾向を比較した。また、種別の被度も比較した。加えて、種を海浜種と内陸種に分類し、それぞれの被度を応答変数、各環境変数を固定効果としてGLMMで解析した。さらに、一年草帯構成種のオニハマダイコン、オカヒジキの出現頻度を比較した。
種の出現傾向は、両サイトとも二区間で有意差があり、旭市のあり区ではコウボウシバ、コマツヨイグサ、ヒメムカシヨモギ、オオアレチノギク、チガヤの被度が、なし区ではコウボウムギ、ハマニンニク、ハマエノコロの被度が有意に高かった。いすみ市のなし区ではオニシバの被度が有意に高かった。GLMM解析の結果、海浜種被度とEC、比高、汀線距離に負の関係、離岸堤の存在、D50と正の関係がみられた。内陸種被度は旭市で汀線距離、粘土・シルト率、離岸堤の存在、ECと正の関係、土壌pHと負の関係がみられた。一年草帯構成種の出現頻度は、あり区で有意に低かった。
以上より、離岸堤を設置した外洋性海浜では波浪軽減や地形変化に伴って内陸種の侵入や一年草帯の縮小が生じ、安定帯の植生へ推移していくことが示唆された。