| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第72回全国大会 (2025年3月、札幌) 講演要旨 ESJ72 Abstract |
一般講演(ポスター発表) P1-064 (Poster presentation)
南西諸島の西表島は亜熱帯域に属し、187種の木本植物が分布している。これらのうちどの種が、先駆的で撹乱地で更新するのか、耐陰性があり安定した森林で更新するのかは、温帯域と比べてほとんどわかっていない。本研究では、西表島のいろいろな森林タイプ(原生林的な林、二次林、石灰岩地の林、海岸林)で行った毎木調査と稚樹調査の結果から、出現種のこれら特性を明らかにすることを目的とした。
西表島の森林内に、5m×100mの調査区を10mごとに区切り、各区画に出現した胸高直径1cm以上の樹木は上木として種名と胸高直径を記録し、胸高直径1cmより小さい樹木は稚樹として、種名と個体数を記録した。各区画内のある種の稚樹個体数を目的変数に、地形(標高、曲率、傾斜)および上木の胸高断面積合計から算出した相対優占度を説明変数としてGLMを行い、稚樹の種特性を評価した。さらにそれぞれの調査区に、どんな種特性の稚樹が出現するかを見て、その調査区の環境を評価した。
稚樹で出現した種のうち、 上木で優占し、GLMで上木相対優占度が有意でかつ係数が正の種を「後継種」とすると、オキナワウラジロガシ、スダジイ、モクタチバナなどが該当した。上木で優占する上記以外を「先駆種」とすると、フカノキ、アカギ、ヒメユズリハ、イスノキなどが挙げられた。上木で優占せず、GLMで上木相対優占度が有意でかつ係数がプラスのものを「林内種」とすると、ナガバイヌツゲ、リュウキュウモチ、リュウキュウモクセイなどが挙げられた。上木には出現するが稚樹が全く見つからない「林外更新種」としては、ギランイヌビワ、ウラジロエノキ、クロガネモチなどが挙げられた。それぞれの調査区は、「林外更新種」や「先駆種」の多い、撹乱がしばしば起きている森林と、「林内種」の種数が多く「後継種」が優占する、しばらく安定している森林とに分けて評価することができた。