| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第72回全国大会 (2025年3月、札幌) 講演要旨 ESJ72 Abstract |
一般講演(ポスター発表) P1-072 (Poster presentation)
一級水系河川のような比較的広大な堤外地を持つ河川に生育する水生植物群落は生育場所へのアクセスが困難な場合が多いため、その分布情報を得るのが難しい。そのため現地に入らずにドローン空撮画像、衛星画像、航空写真から分布情報を得られれば河川の水生植物の分布を把握する上で強力な手段になりうる。全国の一級水系河川では5年に一度、定期縦横断測量が実施されており、航空写真の撮影とともに航空レーザ測深システム(ALB)を用いた河道の三次元データが取得されている。一方で、定期縦横断測量は出水の少ない秋から冬に実施される場合が多く、水生植物の把握には不適な場合が多い。本研究では、沈水と抽水の水生植物が多く生育する利根川水系の大谷川を対象にドローン空撮画像、航空写真等を組み合わせることで、河川に生育する水生植物群落を簡易に判読できるか検証することを目的とした。
ドローン空撮画像はMavic2proで2020年8、10、11月に高度70m、ALBおよび空中写真は2021年10-12月に高度500mの撮影条件のものをそれぞれ使用した。正解となる水生植物のデータは2021年10月に縦断方向に20m程度の調査区を4つ設定し、下流方向から2mごとに河川横断方向に区切り、右岸際、右岸、中央、左岸、左岸際と5つの調査点を設け、各調査点で出現した水生植物種を記録したもの、2021年に作成された河川水辺の国勢調査の基図調査のデータを組み合わせたものとした。
水生植物は合計で4科6属7種(沈水植物:4種、抽水植物:3種)が確認され、沈水植物であるササバモの出現回数が最も多かった。沈水植物は右岸・左岸で多く出現し、抽水植物は右岸際、左岸際で多く出現した。沈水植物については、ドローン空撮画像において8月末よりも10cm水深が減少した10月のほうが明確に判読することができた。一方で抽水植物のヨシ群落については空中写真でも判読できる場合があるものの、ミゾソバ群落については他の群落との判読が難しいことが分かった。