| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第72回全国大会 (2025年3月、札幌) 講演要旨 ESJ72 Abstract |
一般講演(ポスター発表) P1-074 (Poster presentation)
2024年生態学会で台湾低海抜地における植生の群落組成、そこから導き出された潜在自然植生、さらに沖縄との植生学的関連について収集されたデータから考察し、また文献資料との整合性についても検討した。その結果、台湾は全島の低地においてヤブツバキクラス域に含まれることが示唆された。
一方、発表者は赤道直下のマレーシア・ボルネオ島で低地から海抜2000m超までを含む山地にかけての植物社会学的方法による植生データを収集した。
そこで、本研究では日本、台湾、ボルネオの植生データから東アジアの暖温帯~熱帯域での植生の緯度的変化についての検討を行った。なお、過去の解析データと照合する都合上、エングラーの分類体系を使用した。
植生データ解析の結果、赤道直下では海抜高度が高くなるにつれて、クスノキ科、ブナ科、ヤブコウジ科、ツバキ科、バラ科、マキ科の種の区分種・標徴種割合が増加し、Ohsawa(1990)の研究報告と合致していた。一方、台湾低地、琉球列島におけるボチョウジ-スダジイ群団および東アジアの常緑広葉樹林帯の北限付近にあたる日本関東におけるイノデ-タブノキ群集およびボルネオ島植生データを比較したところ、上記区分種・標徴種群の科の割合の出現傾向は高緯度になるにつれて、赤道直下の海抜の上昇と一致する傾向を示した。
すなわち、科レベルの区分種・標徴種種群の割合挙動が水平方向と鉛直方向に再現性高く、普遍性を持っていることが示された。したがって、この同所的出現パターン形は少なくとも東アジアで保存されていると考えられ、種組成の保存性を雄弁に示していると言えよう。
特定の科の系統進化や地誌的あるいは歴史的変遷・移動および現在確認できる種組成を考慮することで、地域群落の形成要因や非常に長い時間的スパンでの群落発達・分化過程がダイナミックに理解されることが期待される。