| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第72回全国大会 (2025年3月、札幌) 講演要旨 ESJ72 Abstract |
一般講演(ポスター発表) P1-079 (Poster presentation)
近年の気候変動に伴い、樹木の枯死パターンの変化が各地で観察されている。樹木の枯死は炭素貯留などの森林生態系機能を低下させる要因であり、変化した気候や攪乱に脆弱な種の死亡を 通じて森林の種組成にも影響を与える。よって、枯死の傾向と駆動要因の解明は森林動態の理解に不可欠であるが、明確な干ばつイベントが確認されていない日本の森林では、密度効果以外の樹木の死亡率の推移や駆動因について十分な知見が得られていない。
本研究では、約20年間にわたり樹木の成長・定着・死亡を追跡している「モニタリングサイト1000」の森林樹木調査データから、毎年調査が行われている北海道雨龍サイトから沖縄与那サイトまでの約1haの森林19コアサイト の約20,000個体を抽出し、(1) 樹木の枯死率の変動傾向、および (2) その枯死率を駆動する要因を解析した。具体的には、各年の個体の生存および 枯死を応答変数とし、気候要因(年平均気温、年降水量、年最高気温、標準化降水蒸発散指数(12か月平均、48か月平均、調査年)、個体の特性(個体サイズ、生活型)、群集の特性(調査地、個体密度)を説明変数とする階層ベイズモデルを構築した。本研究で探索した日本の森林の枯死動態を駆動する要因は、今後の森林管理や気候変動への適応策の検討に貢献することが期待される。