| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第72回全国大会 (2025年3月、札幌) 講演要旨
ESJ72 Abstract


一般講演(ポスター発表) P1-080  (Poster presentation)

多様な標高・土壌条件における湿原植物種の潜在分布を機能形質から予測する【A】【O】
Predicting potential plant species distribution by functional traits in moorlands across various altitudes and soil conditions【A】【O】

*大石真(東北大学), 河合勇高(東北大学), 鈴木克実(東北大学), 谷口快海(東北大学), 石井直浩(鳥取大学), 巻島大智(横浜国立大学), 須藤瑠衣(横浜国立大学), 後藤亮仁(横浜国立大学), 陶山佳久(東北大学), 佐々木雄大(横浜国立大学), 彦坂幸毅(東北大学)
*Makoto OISHI(Tohoku Univ.), Yutaka KAWAI(Tohoku Univ.), Katsumi SUZUKI(Tohoku Univ.), Hayami TANIGUCHI(Tohoku Univ.), Naohiro ISHII(Tottorri Univ.), Daichi MAKISHIMA(Yokohama National Univ.), Rui SUTO(Yokohama National Univ.), Akihito GOTO(Yokohama National Univ.), Yoshihisa SUYAMA(Tohoku Univ.), Takehiro SASAKI(Yokohama National Univ.), Kouki HIKOSAKA(Tohoku Univ.)

 一つの群集内に存在できる種を決定する要因として、環境フィルタリングと競争排除という二つの拮抗するプロセスが考えられている。また、機能形質の値を利用することで両プロセスを定量的に表すことができると期待されている。すなわち、ある生息地では、そこで生息可能な種の形質値の範囲が非生物的環境によって決まり、類似した形質値をもつ種の間で競争排除が起きる。これまで、環境フィルタリングの考え方を利用して、種の潜在分布を予測する試みが様々な分野で行われてきた。しかし、分布を決定する環境要因や機能形質はそれぞれ複数あるはずで、これらの多次元的な側面を取り入れた潜在分布の予測は行われていない。
 本研究では、環境フィルタリングのアイデアを複数の形質について適用し、種の潜在的存在量を予測することを試みた。そして、現実の存在量を潜在的存在量で除した値を競争力と定義した。材料として、環境(9種類)が異なる八甲田山系の20湿原に存在する植物種の形質値(10種類)と被度を用いた。各湿原における出現種の被度と形質値の関係をカーネル密度推定で表して選択される形質値の値を予測し、その値をもつ種の潜在アバンダンスを推定した。各形質で得られた潜在アバンダンスの平均値をその種の潜在的アバンダンスとした。そして、潜在分布の環境依存性、潜在アバンダンスと実際のアバンダンスとの関係、競争力と機能形質値、および競争力と環境計測値との関係を評価した。
 結果、機能形質値の潜在分布はさまざまな環境勾配に沿った変動がみられ、資源利用戦略のトレードオフを反映した環境フィルタリングの影響がみられた。また、予測された潜在アバンダンスは一部の種の実際のアバンダンスのみを予測したことから、種によって競争力が大きく異なることが示唆された。


日本生態学会