| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第72回全国大会 (2025年3月、札幌) 講演要旨
ESJ72 Abstract


一般講演(ポスター発表) P1-086  (Poster presentation)

富士山火山荒原の一次遷移に伴う土壌ー細胞外酵素ー微生物バイオマス間のCNP比の変化【A】【O】
Changes in the CNP ratio between soil, extracellular enzymes and microbial biomass with the primary succession on the volcanic desert of Mt.Fuji.【A】【O】

*山本真瑠, 吉竹晋平(早稲田大学)
*Maru YAMAMOTO, Shinpei YOSHITAKE(Waseda Univ.)

土壌環境中の炭素(C)、窒素(N)、リン(P)の比(CNP比)と土壌微生物バイオマスのCNP比にはギャップがある。また、土壌環境の変動に対して微生物群集はCNP比を維持する、あるいは柔軟に変化させて適応していることが知られている。この適応メカニズムは結果として、微生物群集がもつ有機物分解や土壌生成などの機能に影響している可能性があるが詳細はよく分かっていない。そこで、本研究では狭い範囲で土壌環境が大きく変わる富士山火山荒原において、微生物群集のCN比には恒常性はあるのか、また、有機物分解に重要な細胞外酵素活性のCN比はどう変化するのかを明らかにすることを目的とした。

富士山火山荒原の5つの遷移段階で土壌を採取し、酵素の基質となるC、Nとして熱水抽出炭素、全Nを定量した。また、クロロホルム燻蒸抽出法により土壌微生物バイオマスC、Nを測定した。さらに、C、N獲得酵素として、αグルコシダーゼ、Nアセチルグルコサミニダーゼの酵素活性を測定した。以上のデータから、土壌―細胞外酵素―微生物バイオマスのCN比の関係を解析した。

易分解性炭素、全Nは遷移初期に増加し、遷移後期ではあまり変化しなかった。土壌CN比は遷移に沿ってわずかに減少した。微生物のCN比は遷移に沿ってわずかに減少した。つまり、微生物のCN比に恒常性はなく、土壌CN比の変化に柔軟に適応していると考えられた。また、酵素活性CN比は遷移初期で大きく減少し、Nをより多く分解するように分泌パターンが変化した。土壌と微生物のCN比のギャップを仲介する要因として、酵素活性CN比が重要であると予想していたが、酵素活性CN比は微生物CN比と相関はあったものの、土壌CN比とは相関がなかった。また、酵素活性CN比の変化は、微生物群集構造の変化(Yoshitake et al. 2013)と同じタイミングで起こっており、群集構造の変化に伴う酵素活性CN比の変化が、土壌微生物のCN比の変化に影響を与えている可能性が考えられた。


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