| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第72回全国大会 (2025年3月、札幌) 講演要旨
ESJ72 Abstract


一般講演(ポスター発表) P1-088  (Poster presentation)

スナビキソウの集団遺伝構造の解明【A】【O】
Population genetic structure of Heliotropium japonicum【A】【O】

*髙橋直紀, 岩田梓, 近藤崇史, 小宮山佳奈, 林清宇, 石崎智美(新潟大学)
*Naoki TAKAHASHI, Azusa IWATA, Takahumi KONDOU, Kana KOMIYAMA, Seiu RIN, Satomi ISHIZAKI(Niigata Univ.)

 砂浜は塩害、乾燥、強風等のストレスの多い環境であり、そのような特殊な環境に適応した海浜生物が生息している。しかし、近年、砂浜は浸食や地盤沈下によって面積が減少し、また、多くの場所で護岸工事が行われている。これらの環境変化は海浜生物の生息地の急激な減少をもたらしている。
 スナビキソウ(Heliotropium japonicum A.Gray)は、波打ち際付近に生育する典型的な海浜性の多年生植物で、5~7月に開花し、果実はコルク層を持ち海流散布される。また、地下茎が砂中を長く伸長し、広範囲にクローンが広がる。近年の砂浜の減少により、多くの地点で集団の消失・縮小が生じている。そこで、本研究では、スナビキソウの密度に砂浜が面積とスナビキソウ密度の関係を明らかにすることを目的とした。また、砂浜は本来、拡大と縮小を繰り返す環境であり、そのような環境に生育するスナビキソウは、果実が海流散布されることで、砂浜間でメタ個体群を形成している考えられる。メタ個体群としての集団間の交流の強さを明らかにするためには、スナビキソウ集団間の遺伝的なつながりを明らかにする必要がある。
 新潟県内のスナビキソウ集団において、実地調査によって砂浜内の生育密度を推定した。また、各地点の過去と現在の航空写真を比較し、砂浜面積の増減率を求めた。その結果、過去50年間で砂浜が減少している地点ではスナビキソウの生育密度が低いことが示された。遺伝解析では、北海道から九州の33集団について葉緑体DNAの解析を行った。その結果、trnV(UAC)✕2 - ndhC領域では、新潟県、富山県、愛知県、三重県、京都府、鳥取県、福岡県の一部の集団に21塩基の欠失が見られた。発表では、得られた結果からスナビキソウの遺伝的な関係について考察を行う。


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