| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第72回全国大会 (2025年3月、札幌) 講演要旨 ESJ72 Abstract |
一般講演(ポスター発表) P1-092 (Poster presentation)
都市化や宅地開発による土地改変を受けた緑地では、周辺に残存する半自然草原のような従来の植生への回復は困難と考えられてきた。しかし、近年、時間経過により残存緑地の植生との類似が進む事例が報告され、植生回復の可能性が示唆されている。本研究では土地改変後の経過時間が異なる草地を対象に、土地改変後の植生発達について時間経過と種多様性・植生回復の関係、また植生発達の要因を明らかにすることを目的とした。
1970年代から宅地造成による土地改変が行われた多摩ニュータウンを中心とした多摩丘陵内のススキ型草地を対象とした。盛土地18地点、切土地17地点、残存緑地5地点の計40地点を選定し、各調査地点で1m×1mの方形区を6箇所設置して出現種と種の被度を記録するとともに、土壌硬度、pH、ECを測定した。
種多様性については、全出現種、在来種、外来種の3区分のシャノン多様度指数を応答変数に、植生回復については出現種の被度をNMDSによって序列化し、それを元に算出した植生非復元度を応答変数に、残存緑地面積、経過年数、表層撹乱深、土壌硬度、pH、EC、調査地面積を説明変数にとり、それぞれ重回帰分析を行い、AICを基準にモデル選択を行った。
調査結果から時間経過による種多様性の向上と、周辺の半自然草原の植生への回復が示唆された。土壌硬度が高いほど主に外来種の種多様性と植生非復元度が向上し、都市に適応する種の定着を促進したと推察された。また、周辺残存緑地面積が大きいほど主に外来種の種多様性、植生非復元度が低下し、残存緑地からの種の侵入が植生回復を促進したと推察された。さらに、表層撹乱深が大きいほど植生非復元度が低下したことから、盛土地に存在した埋土種子が植生回復を促進した可能性が示唆された。一方、pHやECと植生との関係は明瞭ではなく、景観要因等の他の要因がより大きな影響を及ぼしている可能性が推察された。