| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第72回全国大会 (2025年3月、札幌) 講演要旨
ESJ72 Abstract


一般講演(ポスター発表) P1-093  (Poster presentation)

栃木県北東部の耕作放棄畑に成立する植物群落の特徴【O】
Characteristics of old-field plant communities in north-eastern Tochigi Prefecture, Japan【O】

*西尾孝佳, 井川絢香, 菊地健太郎(宇都宮大学)
*Takayoshi NISHIO, Ayaka IGAWA, Kentaro KIKUCHI(Utsunomiya University)

高齢化と過疎化が深刻な里山では森林管理の停滞や耕作放棄地の増加に歯止めが効かず,地域社会の衰退が著しい。野山に繁茂した植物は草やぶとなり,特に耕作放棄畑における植物の繁茂は著しく,土地管理を困難にするだけでなく,不法投棄、鳥獣害被害などの誘発が懸念されている。 そこで本研究では,こういった耕作放棄畑の現状を明らかにするために,またどのように遷移が進行しているのかを推定するために,植物群落の組成構造を検証した。調査は栃木県那須烏山市大木須地区で実施し,クロノシークエンス法による遷移系列の推定を試みた。空中写真の判読と現地踏査により,放棄年代の異なる耕作放棄畑(一年生つる植物群落,クズ群落,ササ群落,タケ群落,やぶ状低木林など)と,同様な遷移系列上にあると想定した,耕作放棄畑の近隣に分布する,遊休農地(定期的な耕耘あり),落葉広葉樹二次林および常緑広葉樹林を選定した。植生調査では 20×20 ㎡方形区にて,全出現種をリストアップし各種の優占度を判定した。遷移の進行にともなう植物種構成の変化は,非計量多次元尺度法(NMS)で解析した。植物種構成は畑地から森林に遷移する過程とともに変化した。種組成変化のパターンは,畑地から落葉広葉樹二次林に向かいササ群落へと移行する場合, 畑地から常緑広葉樹林に向かいタケ群落へと移行する場合などの遷移方向が示唆された。耕作放棄後 30 年以上経過したやぶ状低木林はいずれの森林タイプの種組成とも2つの遷移方向とも異なる傾向にあった。また,クズが優占する耕作放棄畑では出現種数が少なく,また遷移の進行を特徴付ける木本種が少なかった。以上より,対象地域における遷移の進行は複雑で,その要因としてつる植物の繁茂が関係すること示唆された。


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