| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第72回全国大会 (2025年3月、札幌) 講演要旨 ESJ72 Abstract |
一般講演(ポスター発表) P1-097 (Poster presentation)
火山噴火は一次遷移を引き起こし、土壌や植生が発達した後に極相になる。しかし数千年以上の長期間で撹乱が生じない場合、主に土壌中の利用可能なリンの減少が要因となり、分解や栄養塩循環といった生態系機能が衰退する。
本研究の調査地である三宅島と御蔵島はいずれも伊豆諸島の火山島である。2000年に噴火した三宅島では中大型土壌動物群集の初期発達について検討できる。一方、御蔵島は5000 年以上噴火が起きておらず、生態系の衰退が起きている可能性がある。本研究では、土壌動物群集の遷移初期段階における発達過程と数千年規模で撹乱を受けていない生態系における土壌動物群集の変化、特に生態系の衰退を示す傾向にあるかを検討した。
三宅島の調査地はハチジョウススキ草原、オオバヤシャブシ低木林の2地点(2000年噴火跡地)とスダジイ林2地点(未被害地)とした。御蔵島の調査地はスダジイ林2地点とした。①ツルグレン法による中大型土壌動物(リター及び深さ10 cmまでの土壌)の採集、②ハンドソーティング法による大型ミミズの採集、③全窒素量・全炭素量の分析、④植物根重量の測定を行った。
三宅島では、植生の回復に伴う中大型土壌動物群集及び大型ミミズ群集の個体数増加が見られ、遷移初期段階では高い分散能力をもつトビムシ類やササラダニ類が主要な分類群だった。特に土壌生成が遅れ、有機物が乏しい2000年噴火跡地の火山灰層では土壌動物群集は貧弱だったが、植物根が群集の発達に重要な役割を果たす可能性が示唆された。火山灰の供給を断続的に受ける三宅島のスダジイ林と、5000年以上撹乱を受けていない御蔵島のスダジイ林の比較では、御蔵島のスダジイ林で土壌動物群集の個体数が少なく、土壌動物群集が衰退する傾向が見られた。