| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第72回全国大会 (2025年3月、札幌) 講演要旨
ESJ72 Abstract


一般講演(ポスター発表) P1-100  (Poster presentation)

耕作放棄水田における植物群集パターンの予測にかかわる環境要因の検討【A】【O】
Environmental factors predicting plant community patterns in abandoned paddy fields【A】【O】

*Hayase SAKAMOTO, Rei SHIBATA(Niigata Univ.)

近年、全国的に耕作放棄地面積が急拡大している。水田では放棄後速やかに植物が侵入し、数年で複数パターンの植物群集が成立する。このような植生の変化は水田生態系に大きな影響を与える。そのため、放棄後の水田に成立する植物群集のパターンを明らかにし、その分布を予測することが求められる。分布を予測するには放棄水田における植物群集と分布を決定する環境要因との関係を明らかにする必要がある。そこで本研究では放棄水田に成立する植物群集パターンと、その予測にかかわる環境要因を明らかにすることを目的とした。
調査は新潟県佐渡島における放棄水田98地点にて行った。各調査地で草本・木本植物を対象とした植生調査を実施し、得られたデータを基にクラスター分析・指標種分析を行うことで植物群集パターンを明らかにした。環境要因として、現地での土壌水分測定に加え、ArcGISを用いて各調査地周辺の土地利用に関する変数や標高等を取得した。さらに過去の空中写真から放棄後経過年数を推定した。目的変数を各植物群集パターンにおける指標種の在不在、説明変数を上記の環境要因として機械学習の一種である勾配ブースティング法を行った。クラスター分析の結果、放棄水田の植物群集をクズ群落・ススキ群落・セイタカアワダチソウ群落・ミゾソバ群落・ヨシ群落・指標種がいない群落の6パターンに分類でき、一部で先駆樹種や二次林構成樹種、竹が優占していた。機械学習の結果、セイタカアワダチソウについて比較的高い予測精度で在不在を推定できたが、その他の指標種の予測精度は低かった。セイタカアワダチソウは里山指数が高く、放棄後経過年数が短い場合に出現率が高かった。以上から土地利用の多様性の高い景観に位置する水田が放棄されると、放棄初期に外来種であるセイタカアワダチソウが侵入する可能性が高いことが明らかになり、土地利用が複雑な里山での耕作放棄は生態系の単純化を招くと考えられる。


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