| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第72回全国大会 (2025年3月、札幌) 講演要旨 ESJ72 Abstract |
一般講演(ポスター発表) P1-101 (Poster presentation)
近年、LiDAR技術を活用した森林計測が普及している。林内で使えるLiDARとしては、固定式の地上レーザースキャナ(TLS)と移動式のモバイルレーザースキャナ(MLS)がある。TLSは高精度な点群データを取得できるが、計測に時間がかかり死角が生じやすい。一方、MLSは移動しながら計測でき、短時間で広範囲のデータを取得可能であるが、精度はやや劣る。MLSを利用した森林調査事例はいくつかあるが、大径木を対象にしたものが多く、若い二次林など細い木の検出精度に関する研究は見当たらない。本研究では、若い二次林から老齢林まで、様々な広葉樹二次林において、MLSによって、どの程度の精度で、樹木識別とDBH推定が可能なのかを検証した。
調査は、北海道大学苫小牧研究林の林齢の異なる12個の20m×20mプロットで実施した。MLS(BLK2GO , Leica Geosystem社)により、点群データを取得した。得られた点群データをFSCT(Krisanski et al. 2021)で解析し、現地測定データと比較した。
その結果、DBH 1cm以上の1,736個体のうち1,501個体(86.5%)を検出し、DBHクラスが大きくなるほど検出率も上昇した。一方で、125個体の誤検出があり、これは主に複幹の分離が困難だったためと考えられる。また、林分密度と検出率には有意な相関はなかったが、密度が高いほど誤検出割合が増加した。DBHの推定精度は全プロットでRMSE 2.5cm未満と評価されたが、若齢林ではやや過大評価の傾向がみられた。これは小径木では幹に反射する点群数が少なく、推定誤差が生じたためと考えられる。以上の結果から、林分密度にもよるが、小径木が多い森林でもMLSは多くの樹木を効果的に検出し、DBHを評価できることが明らかになった。