| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第72回全国大会 (2025年3月、札幌) 講演要旨
ESJ72 Abstract


一般講演(ポスター発表) P1-103  (Poster presentation)

三宅島2000年噴火後の土壌有機物蓄積過程の解明【O】
Soil organic matter accumulation process after the 2000 Miyakejima eruption.【O】

*鶴綾乃, 浅野眞希, 小林耕野, 田村憲司, 上條隆志(筑波大学)
*Ayano TSURU, Maki ASANO, Koya KOBAYASHI, Kenji TAMURA, Takashi KAMIJO(University of Tsukuba)

土壌有機物の中でも、有機物と鉱物が結合した有機無機複合体は安定性が高く、炭素隔離機能を持つ炭素貯留源として気候変動の緩和に貢献しうる。土壌有機無機複合体の発達過程を明らかにするために、土壌生成過程の研究が有効であるが、ごく初期段階の土壌生成過程をとらえた研究は少ない。そこで本研究では、2000年に大規模な噴火が起きた伊豆諸島の三宅島を調査対象とし、24年目の土壌を比重-粒径サイズ分画法を用いて有機無機複合体の特徴を明らかにすることを目的とした。
三宅島に設置された固定調査区から、2000 年噴火で降灰の影響を受け植生が発達過程にある地点(降灰区)と、対照区として噴火被害の少ない極相林(対照区)の2地点を調査地として選定した。リターを除いた縦20cm×横20cmの表層0-5cmの土壌を採取し、比重-粒径サイズ分画法により、軽比重画分(LF、<1.6 g cm-3)と重比重画分(HF、 >1.6 g cm-3)に分画した。LFは、重液を添加後振とうせず24時間放置後に分離するLF1、その残渣にガラスビーズを添加し16時間振盪後に分離するLF2、 150JmL-1の超音波処理で分離するLF3に分画後、洗浄・回収し、残ったHFを超音波による最大分散処理(5kJmL-1)後、粒径分画法で<2µm、2-20µm、20-200µm、200-2000µmに分画し、得られた各画分の重量、有機炭素量、全窒素量、選択溶解法によるFe、Al、Siを測定した。
分画の結果、LFの重量割合とLF2画分の有機炭素存在量が対照区より降灰区で高い値を示した。また、Alo、Alpの濃度は降灰区より対照区で2倍以上高かった。一方、HFのみで比較すると各画分の有機炭素の濃度は両地点で差異が認められず、HF中の有機炭素の9割以上が粘土画分に存在することが明らかとなった。この結果から、噴火後24年で対照区のスダジイ林と類似した有機無機複合体が形成されつつあることが示唆された。


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