| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第72回全国大会 (2025年3月、札幌) 講演要旨 ESJ72 Abstract |
一般講演(ポスター発表) P1-105 (Poster presentation)
「昆明・モントリオール生物多様性枠組」では,2030年までに陸と海の30%以上を保全する「30by30目標」が掲げられた.これを達成するための取り組みの1つとして,環境省では民間等により生物多様性保全が図られている区域を「自然共生サイト」に認定する制度を創設した.2024年度前期の段階で自然共生サイトは253カ所あるが,沿岸域サイトはわずか8カ所である.今後,民間等による干潟・藻場の保全活動等の活発化が予想されるが,それが沿岸域の生物多様性に及ぼす効果・影響は明らかにされていない.本研究では,沿岸域の自然共生サイトである大阪湾阪南市の「阪南セブンの海の森」の前浜干潟,河口干潟やアマモ場において底生動物(ベントス)相の詳細な調査を行い,周辺海域の干潟と比較することでその生物多様性を評価した.
調査は自然共生サイトの「波有手」,「男里川」,比較対照として近傍の「岬町(深日,落合川)」,「西宮御前浜」,瀬戸内海四国沿岸の「西条加茂川」を加え,計5サイトで行った.各サイトで2カ所の調査エリアを設定し,エリア内の潮間帯上部と下部に調査ポイントを設置した.2024年4~8月の大潮干潮時に各ポイントで調査を実施した.各ポイントで,15cm径のコアを用いて深さ20cmまでの底土を3カ所で採取し,1mm目で篩い,篩上に残ったベントスを同定・計数した.また,各ポイントのハビタットごとに2名以上で15分程度定性調査を行った.
その結果,「波有手」で237種(タクサ),「男里川」で220種,「岬町」で113種,「御前浜」で30種,「西条加茂川」で163種が確認された.RL掲載種(環境省RL2020)はそれぞれ16種,26種,9種,4種,28種であった.自然共生サイトの「波有手」では開放的な砂質干潟やアマモ場の存在が影響し,種多様性が高く,「男里川」は塩性湿地や泥干潟に生息する絶滅危惧種の多様性が高かった.本講演では各ポイントで得られた在・不在データよりクラスター解析も実施し,各サイトのベントス群集の特徴を議論する.