| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第72回全国大会 (2025年3月、札幌) 講演要旨 ESJ72 Abstract |
一般講演(ポスター発表) P1-108 (Poster presentation)
近年、放置された竹林が周辺の自然植生に広がることにより、生物多様性に影響を及ぼす事例が報告されている。こうした影響は、土壌生物にまで及ぶとされ、トビムシを含む土壌中型土壌動物への影響も報告されている。一方で、タケ侵入する境界面で土壌動物群集の変化がどのようにおこり、その変化はどのような環境要因と関連しているのかは明らかにされていない。本研究の目的は、広葉樹二次林にまさに侵入を行っている境界面において、タケの影響の大きさに伴って、土壌動物であるトビムシ群集の構造がどのように変化するかを明らかにすることである。
京都府京田辺市の広葉樹二次林とモウソウチク林が尾根に沿って横向きに隣接する斜面において、斜面横向き方向に40m、斜面上下方向に20mのプロットを設定し、5m四方の32個のサブプロットに区切った。各サブプロット内の胸高5cm以上の樹木及びタケの本数とその周囲長を計測し、各々のサブプロットの種ごとの胸高断面積合計を求め、各サブプロットの植生の環境要因とした。サブプロットの中心部において、土壌コア(25cm2×5cm)を用いて有機物層、土壌(深さ5cm)を採取し、ツルグレン装置でトビムシを抽出した。トビムシ群集の採集は2020年8月及び12月に行った。リター層の含水率、堆積リター量、樹木の葉・タケの葉・枝のリター量などを計測し土壌環境要因とした。
冗長分析(RDA)を用いて、各サブプロットで採集されたトビムシ群集の組成を空間要因と植生および土壌環境要因とに変動分割を行ったところ、空間要因とともにリター量やタケの侵入量がトビムシ群集組成の変動を説明している事がわかった。また、トビムシ群集の体長の加重平均はリター全体やタケのリター量が増えると減少し、12月採集における真土壌性指標はタケのリター量が増えると増加する傾向を示した。以上から広葉樹二次林へのタケの侵入は落葉堆積様式などの変化を通してトビムシ群集の構造に影響を与えていると考えられた。