| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第72回全国大会 (2025年3月、札幌) 講演要旨
ESJ72 Abstract


一般講演(ポスター発表) P1-109  (Poster presentation)

寄生性等脚類エビノコバンが宿主スジエビの成長に与える影響【O】
The effects of parasitic isopod Tachaea chinensis infection on the growth in host shrimp Palaemon paucidens.【O】

*木下桂(京都大学生態研), 藤原一登(大阪教育大学), 岡崎純子(大阪教育大学)
*Kei KINOSHITA(Kyoto Univ.), Itto FUJIWARA(Osaka kyoiku Univ.), Jyunko OKAZAKI(Osaka kyoiku Univ.)

 エビノコバンTacaea chinensisは、淡水または汽水に生息するエビ類に寄生する外部寄生虫である。 エビノコバンは、宿主の頭胸部側面に付着して宿主の体液を吸収することが報告されている(Xu et al., 2021)。琵琶湖に生息するエビノコバンは、複数種のエビ類を利用することが知られており、主にスジエビPalaemon paucidens に寄生する。そこで,本研究ではエビノコバンが成長の過程で宿主スジエビに与える影響を明らかにすることを目的とし、飼育実験下のエビノコバン感染スジエビと非感染スジエビの成長の比較とエビノコバンの成長解析を行った。
飼育実験は2024年5月からエビノコバンが成熟して、スジエビから離れるまでの98日間行った。エビノコバンに感染したスジエビ感染区と非感染区を設定し、水槽の中で飼育実験を行った。飼育実験では2週間毎にスジエビ・エビノコバンの湿重量の測定を行い, SGR(瞬間成長率 % )を算出した.また、エビノコバンについては、雌雄ごとに実験開始時の湿重量と体長、成熟後の湿重量と体長、成熟までにかかった日数の比較を行った。
 その結果、感染区と非感染区のスジエビのSGRは、非感染区で正の値を示した。一方、感染区ではSGRは負の値を示した。実験開始後14日後のスジエビのSGRは、感染区と非感染区の間で有意な差は見られなかったが、28日、42日、56日後では感染区と非感染区の間で有意な差が見られた。エビノコバンでは、実験開始から56日後までの全てで、SGRが正の値を示した。エビノコバンの雌雄の差については、成熟までにかかった日数で有意な差がみられたが、実験開始時の湿重量と体長、成熟後の湿重量と体長では、メスの方が大きな値を示したが、有意な性差は認められなかった。これらのことから、スジエビはエビノコバンから負の相互作用を受けていることが明らかとなった。エビノコバンの雌雄によっても宿主に与える影響が異なる可能性が示唆された。


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