| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第72回全国大会 (2025年3月、札幌) 講演要旨
ESJ72 Abstract


一般講演(ポスター発表) P1-112  (Poster presentation)

流れが及ぼす珊瑚礁魚類群集への影響【O】
Effects of flows on fish communities in coral reefs【O】

*石川昂汰, 近藤倫生(東北大学)
*Kota ISHIKAWA, Michio KONDOH(Tohoku Univ.)

珊瑚礁魚類は海洋全体の生物多様性の約4分の1を占め、生態系機能や生態系サービスにも大きく寄与している。このことから、様々な環境要因が珊瑚礁魚類に与える影響が盛んに研究されてきた。特に流れは水に囲まれて生きる魚類の行動や生理に複雑な影響を及ぼす環境要因である。また、流れは地球温暖化に起因する熱帯低気圧の発達促進、潮流の変化、沿岸開発に起因する沿岸構造の変化などに大きな影響を受けることからも、流れと珊瑚礁魚類生態系の関係を理解することは生態学的・保全学的に非常に重要である。
これまで、流れの魚類への影響は主に個体レベルを対象として調べられてきた。例えば、魚類が流速の変化によって採餌体積やエネルギー消費量、鰭の動作を複雑に変化させたり、構造物の後流を利用してエネルギー消費を抑制するなどの様々な応答が報告されている。このような流れの魚類個体レベルへの影響の強さから、群集レベルへの影響が示唆されているものの、実際に流れがどのように魚類生態系へ影響するかはほとんど明らかになっていない。
本研究では、流れの計測と魚類群集観測を組み合わせることによって、流れが魚類群集に及ぼす影響を調べた。沖縄本島北谷町の珊瑚礁沿岸1地点において、2日間に渡り日中毎時10分間、魚類と流れの観測を行った。流れの解析により、調査地では波によって駆動される振動流が起きていることが分かった。平均流速、乱流運動エネルギー、乱流エネルギー散逸率、レイノルズせん断応力は同様の環境条件下での先行研究とよく似た範囲で変動していた。魚類群集は撮影した動画をもとに機械学習による魚種自動同定と三次元再構築を組み合わせ、特定体積内の各種の個体数を計測した。多変量解析を使って流れの要因が魚類群集構造に与える影響を評価した。


日本生態学会