| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第72回全国大会 (2025年3月、札幌) 講演要旨
ESJ72 Abstract


一般講演(ポスター発表) P1-116  (Poster presentation)

白川河口干潟における底生生物群集構造の空間変異【A】【O】
Spatial variation of benthic macrofaunal community structure at Shirakawa tidal Flats【A】【O】

*寺田大晟(熊本大学), 山田勝雅(熊本大学), 逸見泰久(熊本大学), 吉野健児(国水研), 伊藤紘晃(熊本大学), 中田晴彦(熊本大学), 田中源吾(熊本大学), 嶋永元裕(熊本大学)
*Taisei TERADA(Kumamoto Univ.), Katsumasa YAMADA(Kumamoto Univ.), Yasuhisa HENMI(Kumamoto Univ.), Kenji YOSHINO(NIMD), Hiroaki ITO(Kumamoto Univ.), Haruhiko NAKATA(Kumamoto Univ.), Gengo TANAKA(Kumamoto Univ.), Motohiro SHIMANAGA(Kumamoto Univ.)

 干潟には多様な生物が生息しており,各種が形成する群集構造やその空間変異は物理化学的環境要因と生物相互作用が相互に影響して決定されていると考えられる.本研究は,熊本県の白川河口干潟において,底生生物各種の空間分布と環境要因を定量的に把握することで,群集構造の空間分布を決める要因を物理化学的環境要因と生物間相互作用の観点から評価した.
 白川河口干潟にそれぞれ6地点からなるSO,SW,SJの3つのラインを設定した (計18地点:2024年6月施行).各定点において,底生生物の定量採集は4~5回行い,各種のハビタットを基に,表在性と埋在性に分類した.各定点での環境要因の空間動態を把握するために水質測定と土壌採集を行った.採集・測定した底生生物群集と水柱環境,土壌の関係の相対的重要性を多変量解析(RDA, Variation partitioning)によって評価した.また,主要種各種の個体数を目的変数,中央粒径を説明変数とした単回帰分析を行った.
 表在性底生生物の群集構造は土壌・水柱環境要因でほとんど説明できなかった(19%).一方,埋在性底生生物の群集構造は土壌・水柱環境要因で45%説明された.環境要因の中でも水柱環境であるクロロフィルa (Chl. a),溶存酸素 (DO)が埋在性底生生物の群集構造の空間変異に寄与していた.このことは餌料量と貧酸素発生の空間変動性が埋在性底生生物の群集構造決定に重要な役割を果たしている事を示している.
 埋在性底生生物群集の主要種であるアサリ,ハマグリに注目すると,2種は底質が粗粒化するにつれて個体数が増加する傾向がみられ,これらの2種は泥化した地点は生息域として好まないことが示唆された.一方,主要種であるシズクガイは底質が粗粒化するにつれて個体数が減少した.また,シズクガイは潮下帯に多く分布していた.シズクガイの堆積物食二枚貝の形質と,マイクロハビタットとして底表層を好む形質の両者が起因した結果,潮下帯へ集中分布したと考えられる.


日本生態学会