| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第72回全国大会 (2025年3月、札幌) 講演要旨 ESJ72 Abstract |
一般講演(ポスター発表) P1-119 (Poster presentation)
近年、生態系を取り囲む音環境は大きく変化している。特に都市地域においては、人間活動に伴う騒音の増加等、顕著な変化が起こり、特に鳴き声でコミュニケーションを取る生物に大きな影響を与えている。都市地域における音環境の変化は、人工音による直接的な変化に留まらず、都市化に応じて活動時間を変化させた生物が発する鳴き声による影響もあると考えられる。しかし、都市地域において活動時間を変化させた生物による生態系への影響はあまり検討されていない。そこで本研究は、都市域に生息するセミ類に着目し、活動時間を変化させた生物が生態系に及ぼす影響を検討することを目的とした。セミ類は明るさや気温により活動時間を変化させるため、都市化に応じて鳴く時間を変化させる可能性がある。そしてセミ類の鳴き声は音量が大きく周波数範囲も広いため、様々な生物の鳴き声によるコミュニケーションを妨げる可能性がある。都市化に伴うセミ類の活動時間変化を明らかにするため、レコーダーによる録音とラインセンサス調査の2種類の調査を行った。明るい場所(都市地域)と、暗い場所(都市地域に孤立して存在する緑地)にて調査を実施し、セミ類が鳴く時間を比較した結果、いずれもセミ類は明るい場所(都市地域)では夜間でも活発に鳴くことが明らかになった。そこで、セミ類と発生時期が重複する直翅目の鳴き声の周波数と今回多く観察されたニイニイゼミ、アブラゼミの鳴き声の周波数を比較したところ、複数種において周波数の重複が確認された。この結果は、都市化に伴うセミ類の活動時間の変化は、その場に生息する鳴く虫のコミュニケーションを阻害する可能性があることを示唆する。