| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第72回全国大会 (2025年3月、札幌) 講演要旨 ESJ72 Abstract |
一般講演(ポスター発表) P1-121 (Poster presentation)
群集集合における決定論的過程と確率論的過程の相対的重要性を理解することは、群集生態学において重要な課題である。群集集合の決定論的過程には選択、分散、種分化が関わり、確率論的過程には浮動、分散、種分化が関わると考えられている。しかし、群集集合における決定論的過程・確率論的過程のうち、選択、分散、浮動の相対的重要性がわかっていない。本研究では、滞水樹洞に集合する無脊椎動物群集を対象に、確率論的・決定論的過程の寄与割合と、その割合を構成する高次プロセス(選択、分散、浮動)の組成を明らかにすることを目的とした。調査は均質な環境条件を持つスギ人工林内において実施し、人工樹洞を設置することで、初期群集や環境条件などの初期条件を統一し、確率論的過程と決定論的過程の効果が分離可能な実験系を構築した。
調査の結果、15分類群から合計2822個体の無脊椎動物が採集された。主な分類群はヤマダシマカ(1669個体)とキンパラナガハシカ(493個体)で、これらを合わせると全個体数の約90%を占めた。得られた群集を解析したところ、確率論的過程の割合は82.0%であった一方、決定論的過程は18.0%にとどまった。また、決定論的過程の内、非生物的選択は0%、生物的選択が90.5%、分散が9.5%占めることが示された。このことから、滞水樹洞に生息する無脊椎動物の群集集合は、主に確率論的過程が駆動していること、決定論的過程の大部分が生物的選択に起因し、優占種間の競争が群集組成に大きく影響していることが示唆された。