| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第72回全国大会 (2025年3月、札幌) 講演要旨
ESJ72 Abstract


一般講演(ポスター発表) P1-125  (Poster presentation)

群集動態に及ぼす種組成の影響 -種間相互作用の視点から-【A】【O】
Composition-dependent community dynamics from the perspective of interspecific interactions【A】【O】

*鈴木碩通, Jamie KASS, 占部城太郎(東北大院・生命)
*Hiromichi SUZUKI, Jamie KASS, Jotaro URABE(Tohoku Univ. Life Sciences)

生物群集の環境変動や人為的撹乱に対する応答の解明は、群集の成り立ちだけでなく生態系保全を考えるうえでも重要である。一般に、撹乱要因に対する感受性は群集を構成する種により異なる。このため、撹乱に対する群集応答は、タイミング、すなわち撹乱発生時の群集構造や競争・捕食など生物間相互作用を通じて多様に変化すると予想される。
湖沼で卓越的に出現する動物プランクトンであるケンミジンコ類は、成長に伴って植食性から雑食性へと食性が変化する生活史を有しており、ミジンコ類に対しては餌をめぐる競争者であるとともに潜在的なギルド内捕食者でもある。私達は、世界中で使用され、非標的生物への影響が懸念されている農薬であるイミダクロプリドが、動物プランクトンのなかでも特にケンミジンコ類に選択的な毒性を持つことを示してきた。しかし、この農薬がケンミジンコ類に対する影響を通じて動物プランクトン群集全体にどのような波及的影響を及ぼすかは不明確である。
そこで本研究では、ケンミジンコ(Cyclops vicinus)と2種のミジンコ類(Daphnia cf. pulex, Ceriodaphnia cf. smirnovi)を用いて初期密度が異なるモック群集を作成し、イミダクロプリド暴露後の群集動態を8週間にわたって追跡した。その結果、この農薬はケンミジンコ類を減少させるが、その生物群集全体への影響は、予想どおり、ギルド内捕食や消費型競争の強度を変化させることで多様になることがわかった。本講演ではこれら結果について詳細な報告を行う。


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