| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第72回全国大会 (2025年3月、札幌) 講演要旨
ESJ72 Abstract


一般講演(ポスター発表) P1-130  (Poster presentation)

猛毒植物シキミ(Illicium anisatum)上における節足動物群集の時空間動態【A】【O】
Spatiotemporal dynamics of arthropod communities on a highly toxic plant, Illicium anisatum【A】【O】

*坂井俊介, 𠮷川徹朗(大阪公立大学)
*Shunsuke SAKAI, TETSUROU YOSHIKAWA(Osaka Metropolitan University)

植物と動物の間に見られる相互作用は非常に多様であり、植物が産生する二次代謝産物はその多様性をさらに増す要因となる。一部の植物は植食者からの被食を免れる手段として毒を生産する。一方、植食者には毒への耐性を獲得し、毒を体内に蓄積し捕食者などへの防御に用いるものもいる。節足動物における植物毒耐性や毒蓄積は、ごく限られた植食者については詳しく研究されてきた。しかし、1種の有毒植物上にみられる節足動物群集全体の実態は分かっていない。
本研究では、マツブサ科シキミ属の猛毒植物シキミ(Illicium anisatum)を対象に、植物上の節足動物群集の時空間的動態を明らかにすることを目的とした。シキミは植物体全体に有毒成分アニサチンを含有し、この毒は特に果実や種子に多く分布する。
2023年に大阪府箕面市の箕面国有林において、シキミ22個体のシュート上の節足動物を通年採集し、節足動物群集の時空間的動態について網羅的な観察を行った。さらに広島県廿日市市宮島のサイトも加えて、花上の節足動物の調査および種子のレアリング試験を行った。その結果、シキミの葉上には多様な植食者が見られ、さらに捕食者や寄生者も含め、少なくとも55種以上の多様な節足動物が訪れることが確認された。さらに、シキミの花や種子からは、それらを食べる鱗翅目幼虫などが複数種確認された。また、節足動物の種間で、出現する季節や植物部位は大きく異なっていた。1種の有毒植物上に、さまざまな節足動物がそれぞれの時空間パターンで出現し、この植物を起点に植食者とより高次な捕食者や寄生者による食物網が形成されていた。今後、これらの節足動物種および植物部位のアニサチンの定量化データと合わせることで、これらの動物が毒に対してどのように対応し、利用しているかを、また食物網のなかで毒がどのように伝播しているのかを明らかにする。


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