| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第72回全国大会 (2025年3月、札幌) 講演要旨 ESJ72 Abstract |
一般講演(ポスター発表) P1-132 (Poster presentation)
農地景観の複雑性が生物多様性に及ぼす影響について、水田景観における検証例は少ない。本研究では、中山間地域における景観複雑性の指標として半自然草地の面積構成比および作付される作物の多様性に着目し、局所・景観要因が地表性節足動物の種多様性に及ぼす影響を分析した。新潟県見附市刈谷田川流域の水田畦畔9地点において、ゴミムシ類、クモ類、コオロギ類、ハサミムシ類を対象としたピットフォール採集調査を行い、現地調査とGISにより局所・景観要因を測定した。分析の結果、(1) 水田畦畔における生物相は乾燥した開放的な環境を選好する種により主に構成された。(2)半自然草地の被覆率が高い景観ほどゴミムシ類とコオロギ類の種多様性が高く、半自然草地からの流入が多様性を増大させた可能性が考えられた。したがって、遊休地や耕作放棄地の定期的な除草による草地の維持が、畦畔の節足動物多様性の維持につながることが示唆された。(3)作付品目の多様な景観ではゴミムシ類の種数が減少した。(4)ゴミムシ類とクモ類の群集構成種を水田選好種群とジェネラリスト種群に類別し、作物の多様性への応答を比較したところ、ゴミムシ類では水田選好種群の種数と多様度指数が減少した。この原因は景観内の畑地の面積構成比が高まることで、水田選好種群の生息環境が減少したためと考えられた。一方、作物多様性はジェネラリスト種のクモ類の個体数に正の効果を及ぼしていた。作付品目の多様化は、ジェネラリスト種群の生息場所を多様化させ、個体数を増加させた可能性が示唆された。したがって、地域内に作物多様性の異なる景観が混在する状況では、地域全体の生物多様性を高く維持できると考えられた。