| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第72回全国大会 (2025年3月、札幌) 講演要旨
ESJ72 Abstract


一般講演(ポスター発表) P1-133  (Poster presentation)

大阪の都市緑地に生息する鳥類相の長期的な変化:繁殖期と越冬期の比較【A】【O】
Long-term change in bird communities in urban green spaces in Osaka: comparison between breeding and wintering seasons【A】【O】

*寺嶋建(大阪公立大学), 橋本啓史(名城大学), 吉川徹朗(大阪公立大学)
*Takeru TERASHIMA(Osaka Metropolitan Univ.), Hiroshi HASHIMOTO(Meijo Univ.), Tetsuro YOSHIKAWA(Osaka Metropolitan Univ.)

都市における生物の分布と環境の関係性を解明することは、都市での動物生態の解明につながり、また都市生態系の保全においても重要である。都市の生物群集は時間で変化することが知られており、生物種は都市環境に対する応答を変化させる可能性がある。またこの長期的な変化の傾向は繁殖期と越冬期でも異なる可能性があり、このため都市における種の分布および環境との時間変異は、季節間の違いを考慮して解明することが重要である。
本研究は大阪における都市緑地の鳥類群集の長期的な変化の季節間の違いを解明することを目的とした。大阪市・堺市において2000年度の繁殖期と越冬期にセンサスが行われた84緑地を含む120緑地にて、2020年代の繁殖期と越冬期に調査を行なった。鳥類相と都市環境の関係性の分析として、まず緑地の環境要因として緑被量に着目し、これと各鳥類の出現確率の関係を探った。次に緑地周辺の環境の影響を考慮するため、緑地環境に加え緑地からの様々な距離のバッファ内における緑被と市街地率を説明変数とし、各鳥種の在不在を応答変数とする一般化線形モデルを構築した。その後モデル選択により各鳥類が最も影響を受けている空間スケールと環境要因を各季節で検討した。
調査の結果、2000年と2020年代で鳥類群集に大きな変化が見られた。出現緑地数について、メジロとヒヨドリは夏季と冬季で時代での増減の傾向が異なっていた。またメジロは夏季では時代間で変化がみられなかったが、冬季では緑地の緑被量にかかわらず出現するような傾向を見せていた。ハシブトガラスは2000年に比べ緑被量が少ない緑地でも出現し、その変化は夏季で劇的であった。一般化線形モデルでは生息に最も影響を受ける空間スケールと環境要因の時間変化が季節で異なる種がおり、同じ種でもその変化の方向が異なることがあった。このことは都市環境に対する鳥類の応答の長期的な変化の傾向が季節で異なることを示唆している。


日本生態学会