| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第72回全国大会 (2025年3月、札幌) 講演要旨
ESJ72 Abstract


一般講演(ポスター発表) P1-134  (Poster presentation)

枯死木の腐朽進行に伴う材食性昆虫群集の変化~スギ・ヒノキの幹と根の比較~【A】【O】
Change of wood-inhabiting insects assemblages with a progression of wood decay: Comparison between trunk and root of ceder and cypress trees【A】【O】

*森脇佑太, 土岐和多瑠(名古屋大・院・生命農)
*Yuta MORIWAKI, Wataru TOKI(Nagoya University)

 樹木の木質部を利用する昆虫(材依存性昆虫)は材食性、菌食性、肉食性など多様な栄養ギルドで構成される。北米では、倒木の腐朽の進行に伴ってそれぞれの栄養ギルドの出現頻度が変化する。しかし、腐朽の進行と材依存性昆虫群集の遷移の関係について、樹種間や樹木部位間に違いが見られるかどうかは不明である。本研究は、愛知県において、枯死後0~18年のスギとヒノキの枯死木の地上部(倒木)と地下部(根)を対象に、枯死からの時間経過と腐朽の進行、および材依存性昆虫群集の変化の関係について調べた。その結果、地上部では、枯死後の時間経過に伴い、両樹種共に腐朽が進行し、より時間が経過すると、同一経過年の倒木間でも様々な腐朽度を示した。材依存性昆虫群集では、両樹種共に、時間経過に伴い食性タイプ数が増加傾向にあった。但し、スギ倒木の場合、枯死後15年以降の材のみからシロアリが出現し、優占した。地下部では、時間経過に伴い、両樹種共に地上部に比べて腐朽が緩やかに進行し、より時間が経過すると、同一経過年の根の間でも様々な腐朽度を示した。材依存性昆虫群集は、両樹種共に、時間経過に伴い複雑化傾向を示した。但し、シロアリは出現しなかった。以上より、枯死木の腐朽とそれに伴う材依存性昆虫群集の変化は、樹種間や部位間で概ね共通する傾向を示すが、枯死木の腐朽速度や群集の種組成に差異があることを示唆する。


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