| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第72回全国大会 (2025年3月、札幌) 講演要旨 ESJ72 Abstract |
一般講演(ポスター発表) P1-137 (Poster presentation)
重金属影響下の土壌では、土壌小型節足動物の群集組成は重金属耐性種の優占度が増加し、種多様性が低下することが考えられる。種多様性の低い生物群集では、攪乱が生じた場合の優占種の拡大や群集構造の回復力の遅さが問題となる。本研究では重金属の影響が強く残る鉱山跡地土壌と比較的影響の弱い森林土壌において土壌小型節足動物の群集構造を比較するとともに、土壌環境の攪乱に対する土壌小型節足動物群集の回復力について評価した。
鳥取県若松鉱山跡地にて、森林と鉱山跡地の2ヶ所に調査区を設定し、9月に土壌を採取した(未処理土壌)。また、それぞれの調査区から土壌を持ち帰り、約-18℃での凍結殺虫を行った後に調査区に埋設することにより、土壌攪乱を模した実験を行った。この際、元の調査区に埋設したものと、もう一方の調査区へと埋設したものを用意した。埋設から約1か月後の9月に再回収し、土壌小型節足動物を抽出して分類群の同定と個体数の計数を行った。
土壌の全炭素・全窒素濃度およびC/N比は森林土壌と鉱山跡地とで差は認められなかったが、重金属のクロム・鉛・銅・鉄は森林土壌よりも鉱山跡地土壌で濃度が高くなった。未処理土壌の土壌小型節足動物の個体数と分類群は森林と鉱山跡地とで同程度であった。一方、多様度や均等度は鉱山跡地で減少した。埋設土壌では、未処理の土壌と比べて土壌小型節足動物の個体数が多い傾向にあった。これは、新しいハビタットに侵入途上で個体数が安定していない状況であると考えられる。また多様度指数と均等度は、森林環境では未処理土壌と埋設土壌とで同等の値になったが、鉱山跡地では異なる値となった。 森林環境では小規模の土壌攪乱に対しても比較的早く群集構造が回復する一方で、鉱山跡地では攪乱に対して土壌動物群集の回復力が弱いことが示唆される。