| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第72回全国大会 (2025年3月、札幌) 講演要旨
ESJ72 Abstract


一般講演(ポスター発表) P1-142  (Poster presentation)

有明海湾奥部潮下帯泥場における底生生物群集構造の空間変異【O】
Spatial variation of benthic macrofaunal community structure at subtidal muddy area of Ariake Sea, Kyusyu, Japan【O】

*山田勝雅(熊本大・CWMD), 逸見泰久(熊本大・CWMD), 吉野健児(国水研), 嶋永元裕(熊本大・CWMD)
*Katsumasa YAMADA(Kumamoto Univ. CWMD), Yasuhisa HENMI(Kumamoto Univ. CWMD), Kenji YOSHINO(NIMD), Motohiro SHIMANAGA(Kumamoto Univ. CWMD)

有明海は広大な干潟と我が国最大の干満差を有する内湾であり,隣接する八代海を含めた海域だけに限られる特産種,準特産種が約70種も生息する,生物多様性の保全が望まれる極めて重要な海域である.本海域北部では約35年前より定期的に生物相のモニタリングが行われており,マクロベントス分類群の現存量が大幅に減少していることが指摘されている.しかし,行われてきたモニタリングは底泥を採集することで得られる埋在性ベントス種を対象とした結果であり,表在性ベントス種や近低層に生息する生物種を定量的に評価したとは言い難い.また,採泥量はわずか20cm3であり,偶然採集された種個体の過大評価などが起きる可能性がある.実際に,35年間で90種の出現が記録されているが,普通種は13種で残りの77種は1~2個体の採集記録であった.そこで本研究は,本海域の表在性ベントス種や近低層を含めたマクロベントス群集の空間変異を定量的に明らかにすることを目的とした.
有明海湾奥部潮下帯のマクロベントス種の定量採集は2022年9月,熊本大学の研究実習調査船(ドルフィン・スパーチャレンジャー号)を利用して行われた.泥底6定点において,そりネットを用いて各定点3回の採集が行われた(採集面積18m2).得られた試料は1 mmメッシュで篩い,種個体の同定・計数を行った.
18サンプル(6定点×3 rep.)が採集され,これまで本海域で記録されてきた種数を大幅に超える,136種 (37.0±37.7 種/m2),64,846個体(200.1±122.2 inds/m2)が出現した.種数は北部と南部の2定点で低かった(平均25.3種)が他の4定点では平均42.8種が出現していた.群集構造は定点間で有意に異なっていた (ANOSIM).発表では,空間的な優占種の差異や,これまで記録になかった種の出現などを紹介する.


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