| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第72回全国大会 (2025年3月、札幌) 講演要旨
ESJ72 Abstract


一般講演(ポスター発表) P1-144  (Poster presentation)

コバネアシベセスジハネカクシの化学防御物質と生態学的機能【A】【O】
Chemical defense substances produced by Anotylus amicus and their ecological functions.【A】【O】

*西首嶺一(佐賀大学), 高谷佑生(京都大学院), 栗田桃萌(佐賀大学), 奥園元晴(佐賀大学), 森直樹(京都大学院), 徳田誠(佐賀大学)
*Nishikubi RYOUICHI(Saga Univ.), Yu TAKATANI(Kyoto Univ.), Tomoe KURITA(Saga Univ.), Motoharu OKUZONO(Saga Univ.), Naoki MORI(Kyoto Univ.), Makoto TOKUDA(Saga Univ.)

動物は様々な感覚信号を用いて個体間でコミュニケーションをとっている。こうした信号の機能解明は生物の多様化や進化の過程を洞察する上で重要な課題である。昆虫は陸上生態系で最も多様化した分類群の1つであり、天敵からの防御やフェロモンなど、化学信号を高度に進化させてきた。ハネカクシ科は甲虫目の中で最も多様性が高いとされており、分泌物をさまざまな目的で利用する種が含まれている。コバネアシベセスジハネカクシ(以下、本種)は、雄の頭幅サイズに二型があることや、雄間闘争をすることが報告されており、腹部末端から分泌物を噴射することがあるが、その物質や機能については未解明である。本研究では、本種が分泌する化学物質の機能や組成を解明することを目的とした。まず、室内実験により天敵や同種雄と遭遇した際の行動を観察した。天敵として、オオズアリと遭遇した場合、本種は雌雄問わずすべての個体が分泌物を噴射した。分泌物をかけられたアリは退避し、かけられた部分をぬぐうような行動を示した。一方、雄間闘争では、1例を除き、分泌物の噴射は見られなかった。次に、分泌物のGC-MS分析を行った。標品と比較およびDMDS誘導体化から、p-トルキノン、1-ウンデセン、γ-ドデカラクトン を主成分として同定した。一連の結果から、本種の分泌物は天敵に対する防御物質として機能していると考えられた。


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