| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第72回全国大会 (2025年3月、札幌) 講演要旨 ESJ72 Abstract |
一般講演(ポスター発表) P1-147 (Poster presentation)
気候変動に伴う温暖化による生物の絶滅リスク上昇への懸念に対処すべく、温暖化に対する生物応答の研究が蓄積されてきた。これまで普遍性の高い生物応答として、分布シフトとフェノロジー変化の二つが専ら着目されてきたが、近年、第三の応答として、体サイズ縮小が注目されている。体サイズは、繁殖や資源獲得などに関与する根本的な機能形質であるため、温暖化に伴う変化パターンを明らかにすることは、生物集団の持続性の理解に対しても重要である。体サイズ変化のパターンとして縮小が主たる注目を集める一方で、増大や無変化といった傾向もみられる。しかし、これらの変化パターンを包括的に理解することはできていない。その原因として以下の2点が挙げられる。1)緯度勾配のような気温変化をともなう空間変異により、局所集団間で温暖化に対する応答パターンは異なる可能性があるが、先行研究では一つもしくはごく少数の地点における集団の応答しか調べられていない。2)可塑的応答と進化的応答の交絡によって体サイズの時間変化は非線形的である可能性があるが、先行研究では気温上昇下での線形的な変化が仮定されており、これが見過ごされている。以上より、体サイズ応答の包括的理解を目指すためには、体サイズ変化パターンの空間変異と時間変化の両方を明らかにする必要がある。そこで本研究では、過去20年にわたって国内6地点で採集されたクロツヤヒラタゴミムシ標本を用いて、体サイズの時空間動態を解明することを目的とした。特に、1)局所集団間で体サイズ動態は異なるのか、2)非線形的な体サイズ変化はみられるのか、3)体サイズの緯度クラインの傾きに時間変化はあるのか、を明らかにする。体サイズ動態は局所集団間で異なり、非線形的な変化を示した。さらに体サイズの緯度クラインの傾きに一方向的でない時間変化がみられ、応答パターンは空間変異と時間変化の両方を示すことが示唆された。