| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第72回全国大会 (2025年3月、札幌) 講演要旨 ESJ72 Abstract |
一般講演(ポスター発表) P1-148 (Poster presentation)
島の生物は一般に、近傍の大陸や他の島に由来する。しかし、ニッケイ属樹木という東アジアにありふれた植物に寄生して大型の菌えいを形成する病原担子菌Laurobasidium hachijoenseは、日本では伊豆諸島の八丈島と小笠原諸島の母島からしか報告されていないという点で特異である。近年、八丈島において、我々は本種による菌えい・ヤブニッケイもち病(以下、もち病)から、種々の分類群の昆虫が発生することを発見した。これらの昆虫類には、八丈島において菌基質と植物基質の両側面をもつこの特殊な発生基質を新規に利用するように平行的に宿主変更してきた可能性がある。そこで本研究では、これらの宿主変更が植物(ヤブニッケイ)からなのか、菌からなのか、あるいは菌えいからなのかを明らかにするため、もち病上の昆虫群集の詳細を解明するとともに、もち病のものとは別種の担子菌を病原とするヤブニッケイ黒穂病(以下、黒穂病)から発生する昆虫群集をそれらと比較した。その結果、もち病上の昆虫群集は、本州及び八丈島の黒穂病上の種と一部重複したものの、どちらとも重複しない種が複数含まれることがわかった。これらの昆虫類の既知宿主を調査したところ、菌食者や植物枯死体食者、そして植物と菌類の両方を宿主とするジェネラリストが含まれていることがわかった。本発表ではさらに、以上の結果を基に、もち病上の昆虫群集がどのような集合則によって成立したのかについて議論する。