| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第72回全国大会 (2025年3月、札幌) 講演要旨
ESJ72 Abstract


一般講演(ポスター発表) P1-151  (Poster presentation)

暖温帯コナラ林下の土壌に施用されたバイオ炭の鉛直分布【A】【O】
Vertical distribution of biochar applied to soil under a warm-temperate oak forest.【A】【O】

*内田理沙(神戸大学), 近藤美由紀(国立環境研究所), 飯村康夫(滋賀県立大学), 大塚俊之(岐阜大学), 吉竹晋平(早稲田大学), 鈴木武志(神戸大学), 木田森丸(神戸大学), 藤嶽暢英(神戸大学)
*Risa UCHIDA(Kobe Univ.), Miyuki KONDO(Natl. Inst. Environ. Stud.), Yasuo IIMURA(Univ. of Shiga), Toshiyuki OTSUKA(Gifu Univ.), Shinpei YOSHITAKE(Waseda Univ.), Takeshi SUZUKI(Kobe Univ.), Morimaru KIDA(Kobe Univ.), Nobuhide FUJITAKE(Kobe Univ.)

有機物を低酸素条件下で焼成して得られるバイオ炭は、難分解性有機物であるために農耕地への施用による炭素隔離効果を期待して、温暖化対策のひとつとして盛んに研究されている。その一方で、里山等の林地へのバイオ炭施用に関する情報は少ない。また、施用したバイオ炭自体の林地土壌中での動態に関して中長期的に調査した研究はほとんど無い。演者らは、2015年から埼玉県本庄市の里山林にバイオ炭施用試験区を設け、施用による土壌や森林バイオマスに対する経年的な影響を多角的に調査してきた。本報告では、土壌に施用したバイオ炭の中長期経過後の鉛直分布について報告する。
【試料および方法】埼玉県本庄市のコナラ林(淡色黒ボク土)において、2015年に20 m×20 m、2022年に5 m×10 mの試験区を設け、600~700 ℃で作出された市販の木質バイオ炭を10 t/ha施用した(10t区)。バイオ炭はリターの上から散布した。また、無処理区として0t区を用意した。2022年11月に、これらの処理区において軽く踏圧をかけてO層を含む0-5 cm深の土壌を円筒コアで採取した。5 cmコアの試料をO層とA層に分画し、元素分析装置に供して全炭素含量を、HPLCを用いたベンゼンポリカルボン酸(BPCA)法に供してブラックカーボン(BC)量をそれぞれ測定した。また、2024年5月に同じ処理区においてA層0-20 cm深の鉛直土壌を採取し、0-3 cm, 3-6 cm, 6-9 cm, 9-12 cm, 12-15 cm, 15-20 cmに分画し元素分析装置に供して全炭素量を測定した。
【結果】BPCA法によって推定したBC含量からは、A層に存在するBC割合が散布後7年経過で増加することが認められた。全炭素量測定の結果も同様の傾向を示した。以上の結果から、暖温帯コナラ林の淡色黒ボク土に表面散布したバイオ炭は、7年間でO層からA層へと下方移動したことが示唆された。なお、バイオ炭施用後9年経過のA層鉛直土壌では深さ0-12 cmで全炭素量が増加した。したがって、バイオ炭は9年間で土壌中を鉛直方向に最大12 cm移動したことが示唆された。


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