| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第72回全国大会 (2025年3月、札幌) 講演要旨 ESJ72 Abstract |
一般講演(ポスター発表) P1-157 (Poster presentation)
マングローブ林は土壌中に多くの炭素を貯留していることが知られている。この高い炭素貯留量には、マングローブの細根由来のリターの供給量の多さが起因していると予想されるが、その細根動態に関する知見は乏しい。そこで、本研究では、マングローブ林における細根生産量を明らかにすることを目的とした。
本研究は、亜熱帯のオヒルギ(Bruguiera gymnorhiza)を優占種とするマングローブ林(沖縄県石垣市)で行った。細根動態は、3Dプリンティング技術を活用し安価に制作可能なミニライゾトロン法のひとつ、EnRootシステムを用いて調査した。2023年3月に調査用のアクリルチューブを深さ75 cmまで2023年3月に埋設した。その後、同年9月から3か月おきに1年間、チューブ内の壁面の画像を撮影した。この画像を解析し細根の生産量を推定した。これらのデータと海岸からの距離や近接する樹木の株元からの距離、周囲の気根数のデータなどと比較した。
細根生産量の平均は4.3±2.8 mm-2mo-1で、どの季節においても表層で最も高く深くなるにつれて有意に(p<0.05)減少した。この細根生産量は3-6月で最も高く、9-12月で最も低くなった。また、細根生産量は海岸からの距離に対しては有意な差が見られなかった(p>0.05)。一方、株元までの距離が近いほど、また周囲の気根の数が多いほど増加する傾向にあった。これらの結果はオヒルギの生理特性による影響が考えられた。その他、他の林分との比較などからマングローブ林における細根の動態について議論する。