| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第72回全国大会 (2025年3月、札幌) 講演要旨 ESJ72 Abstract |
一般講演(ポスター発表) P1-158 (Poster presentation)
葉の成長や枯死のフェノロジーを知ることは、樹木の生存戦略や生態系の物質循環を理解する上で重要である。しかし葉バイオマスの成長フェノロジーに関する情報は未だ少ない。林冠画像は葉を広範囲に観察し、その色情報から植生指標を算出することで葉群の生理指標を評価することができる。そこでこれらの植生指標を用いることで葉バイオマスの成長フェノロジーの予測が可能となる可能性がある。また枯死の評価においては、すでに林冠画像の植生指標を用いた手法が提案されている。しかし、適用例は少なく、その汎用性は不明である。そこで本研究では、兵庫県内のヒノキ成熟林において林冠画像撮影による葉の成長・枯死バイオマスのフェノロジーを予測することを目的とした。
成長評価には、まず林縁にあるヒノキの枝先を撮影し、葉の先端部の面積変化から各月の葉の成長率(%)を求めた。その先端画像から様々な植生指標を算出し、面積変化と有意な相関を持つ指標を探した。得られた指標を林冠画像の色情報に適用し、各月の葉の成長率を推定した。また樹高と胸高直径から、既存の式を用いて年間のバイオマス成長量を求め、成長率から各月の葉の成長量を推測した。枯死評価では、リタートラップ法で各月の落葉量を求め、これらと有意な相関を持つ植生指標を探すことで、林冠の各月の枯死量を推測した。
林冠画像から求めた葉バイオマスの成長フェノロジーは、1月から6月にかけて成長量の増加が生じ、その後は緩慢な成長が続いた。一方、林縁の葉や幹の成長は4月から6月に強いピークを示した。この違いは、樹木の部位の違いや林冠と林縁での環境の違いによると予想された。また枯死フェノロジーは、冬に枯死が集中する季節性が見られた。この時に有効だった植生指標は先行研究と異なっており、試験地によって有効な枯死指標が異なる可能性が指摘された。