| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第72回全国大会 (2025年3月、札幌) 講演要旨 ESJ72 Abstract |
一般講演(ポスター発表) P1-162 (Poster presentation)
ケナフは高い光合成能力を持ち、大気中から多量の二酸化炭素を吸収することで知られている。これらを資材としバイオチャーを作出すると多量の炭素を大気から隔離でき、それらを農地へ散布することで、土壌改良による栽培作物の収量増加も期待できる。本研究では、この新たな方策の提案に向けて、休耕地でケナフを栽培することで吸収できる炭素量、それをバイオチャーにしたときの炭素貯留量、さらにそれを散布した際の作物への影響を明らかにすることを目的とした。
調査は東京都町田市玉川学園の圃場で行った。栽植密度や肥料散布などの条件を変えてケナフを栽培する区と放棄し雑草が生える区を用意し、栽培終了時の収量から炭素の吸収量を推定した。収穫したケナフは簡易式炭化炉を用いてバイオチャーにし、それを散布した区(ケナフは2.30tC/ha、トマトは1.15tC/ha)と対象区において、ケナフおよびトマトの栽培を行った。それぞれの作物について収量を測定するとともに、トマトについては収穫された果実の品質調査を行った。
その結果、ケナフ区は放棄区よりも収量が大きく、多量の炭素を吸収した。栽植密度は、点播での高密度区で収量が大きく、より密度の高い撒播では低くなった。ケナフを炭化した際の炭化率は雑草よりも高い傾向で、収量の多さと合わさって、多量の炭素がバイオチャーとして貯留可能であった。バイオチャーを散布した区において、収量はケナフとトマトでともに対象区よりも高くなった。また、トマトの果実収量や品質にも違いが認められた。これらは、散布にともなう栄養の供給や保水性の変化などが要因として挙げられる。以上の結果から休耕地においてケナフを栽培することで多量の炭素を大気から吸収できること、それを炭化し農地へ散布することで多量の炭素を貯留できることが示された。また、散布は作物の炭素吸収量を増加させるが、品質に影響が出るため注意が必要であることが示唆された。