| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第72回全国大会 (2025年3月、札幌) 講演要旨 ESJ72 Abstract |
一般講演(ポスター発表) P1-163 (Poster presentation)
近年、地球温暖化問題への関心が高まる中、大気中の炭素を隔離する手法としてバイオチャーの活用が注目されている。森林生態系におけるバイオチャー散布の効果は未解明な点が多く、特にリターの分解への影響は十分に解明されていない。散布によりバイオチャーとして炭素が土壌に貯留される一方で、土壌有機物の分解が促進される可能性も指摘されている。
本研究では、優占樹種が異なる5つの林分において、バイオチャー散布が土壌の有機物、特に表層のリター分解に及ぼす影響を明らかにすることを目的とした。 調査の対象は暖温帯のコナラ林、シラカシ林、スギ林、モウソウチク林(東京都町田市)、およびアカマツ林(埼玉県本庄市)とした。各林分から収集した木質資材を用いてバイオチャー(炭化温度:350~600℃)を作成し、それらを散布した散布区(10 tC ha-1)と対照区を(n=3)設定した。リターの分解はリターバッグ法を用いて測定した。
その結果、ほとんどの林分において、バイオチャーの散布区でリターの分解が早い傾向が見られた。特に、コナラ林およびスギ林では散布による影響が大きく(p<0.05)、一方でアカマツ林ではほとんど差がみられなかった。この分解の促進は、バイオチャー散布によってリターの含水率が高まることが一つの要因と考えられる。また、バイオチャー散布から1年以上が経過した時点で、散布によりリターの分解が促進されて放出された炭素量は、バイオチャーとして投入された炭素量の1%未満とごくわずかであった。これらの結果から、森林生態系へのバイオチャー散布は十分な炭素隔離量を確保することが可能で、またその量は林分タイプによって異なる可能性が示唆された。