| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第72回全国大会 (2025年3月、札幌) 講演要旨
ESJ72 Abstract


一般講演(ポスター発表) P1-168  (Poster presentation)

豪雪による撹乱を受けたスギ林における土壌呼吸の時空間変動【A】【O】
Spatial and temporal variation in soil respiration in a Japanese cedar forest after snow disturbance【A】【O】

*鈴木美来, 斎藤琢(岐阜大学)
*Miku SUZUKI, Taku M SAITOH(Gifu University)

 森林における自然撹乱は、樹木分布、微気象、土壌環境などの空間的な不均一性を増加させ、生態系の主たる炭素放出源である土壌呼吸の時空間的変動に影響を与える可能性がある。本研究では雪害を受けたスギ林生態系に着目し、土壌呼吸速度の時空間変動とその変動要因を明らかにした。
 調査は岐阜県高山市の冷温帯常緑針葉樹林サイトに設置された生態系プロットで行った。スギが優占するこのプロットは、2014年12月に雪害による撹乱を受け、現在は被害が大きかった東側を中心に落葉広葉樹や草本が侵入している。本研究では、生態系プロット内の20地点において、閉鎖型チャンバー法を用いた表面積あたりの土壌呼吸速度、土壌温度、土壌水分の計測を2024年4月から11月までの期間に計7回実施した。また、スギ個体の空間分布が土壌呼吸に及ぼす影響を調査するために、計測地点を中心に半径3m以内のスギ個体を対象に、計測地点とスギ個体の距離、スギ個体の胸高直径等を計測し、複数の樹木分布指標を推定した。
 土壌呼吸速度の季節変動は特に地温に依存した。一方、土壌呼吸速度の空間変動は、土壌呼吸計測地点とスギ健全木の距離およびスギ健全木の胸高断面積を考慮した樹木分布指標との関係が特に強かった。この結果から、土壌呼吸速度の空間変動は、観測期間を通して計測地点の周辺に存在するスギ健全木の根呼吸の影響を受けることが示唆された。ただし、夏季は土壌水分による影響を強く受け、秋季はスギの健全木の分布の影響をより強く受ける季節変化が見られ、スギの根呼吸の季節変化の影響を受けている可能性も示唆された。また、当該サイトにおいて、雪害前に実施された土壌呼吸速度に関する既存研究との比較により、雪害による撹乱は土壌呼吸を大幅に減少させることが明らかとなった。本研究により、雪害による自然撹乱が土壌呼吸速度の時空間変動に多大な影響を与えることが示唆された。


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