| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第72回全国大会 (2025年3月、札幌) 講演要旨
ESJ72 Abstract


一般講演(ポスター発表) P1-173  (Poster presentation)

山陰地域のスギ人工林における冬季の窒素流入による土壌窒素動態への影響【O】
Effects of winter N input on soil N dynamics in Japanese cedar plantations in the San'in Region【O】

*藤巻玲路, 澤江裕也, 朝木翔子, 葛西絵里香, 山下多聞(島根大学)
*Reiji FUJIMAKI, Hiroya SAWAE, Shoko ASAKI, Erika KASAI, Tamon YAMASHITA(Shimane Univ.)

 山陰の森林では冬季に特に窒素沈着量が大きいことが知られている。雨としての窒素沈着は降るたびに土壌に窒素が流入するが、積雪する状況では融雪まで窒素が地上にとどまる。しかし、このような土壌への窒素流入様式の違いが、土壌の窒素動態にどのように影響するのか、研究事例は少ない。本研究では、積雪状態の違いによる土壌窒素動態への影響を明らかにすることを目的とし、積雪状況の異なる2カ所のスギ人工林において現地条件での表層土壌の窒素無機化と窒素溶脱を評価した。
 調査地は豪雪境界域の島根大学三瓶演習林と豪雪地帯の鳥取大学蒜山演習林の2カ所のスギ人工林とした。2023年12月から2024年4月にかけて、それぞれのスギ人工林内で土壌の現地培養実験を行い、表層土壌の無機態窒素流入量・溶脱量および窒素無機化速度を調べた。土壌現地培養にはレジンコア法を改変して用い、土壌への窒素流入を遮断した条件と流入する条件を設定して比較した。
 豪雪地帯である蒜山の期間中の土壌への無機態窒素流入量は、三瓶の約1.7倍であった。窒素流入の有無による土壌の窒素無機化速度への影響を比較すると、蒜山では窒素の流入により無機化速度が大きく減少したが、三瓶では大きな影響は認められなかった。土壌への窒素流入がある条件下の窒素溶脱量は、蒜山では窒素流入を遮断した条件と同等であった一方で、三瓶では窒素流出量が倍増した。豪雪境界域である三瓶では降雨や融雪の頻度が高いことにより冬季でも土壌に窒素が供給されやすい状況にあり、期間全体での窒素流入量が比較的少ない状況であっても土壌の窒素溶脱が生じやすいことを示している。


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