| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第72回全国大会 (2025年3月、札幌) 講演要旨 ESJ72 Abstract |
一般講演(ポスター発表) P1-177 (Poster presentation)
先進国から途上国への低品質な中古衣類・靴の流入は、途上国における廃棄・焼却が深刻な環境汚染を引き起こしている。しかし、現地における住民の廃棄物に関する意識や対処方法についてはまだわかっていないことが多い。また、安価で環境に優しいプラスチック処理法として途上国への導入が期待されるワックスワーム(Galleria mellonella)による処理法も、靴底の成分分解に関する知見はない。そこで本研究では以下の2点について検証した。
Q1:中古繊維取引はガーナの廃棄物問題にどう影響するか?
Q2:ワックスワームは靴由来のマイクロプラスチック(SMPs)を分解できるか?
Q1について、ガーナ国内の様々なステークホルダーにインタビュー調査を行った。結果、①大量に廃棄され低品質な衣類・靴が、路上や学校内などで焼却されることで大気汚染が発生していたり、販売者に経済的負担をもたらしたりしていること、②公教育において適切な廃棄物処理の授業がなく、ごみ投棄・焼却が習慣化していること、③公的なごみ処理インフラが不足しており、民間業者の利用が高コストなため、適切なごみ処理を行えないことが分かった。
Q2について、ワックスワームにSMPsと蜜蝋を異なる割合で5日間摂取させた実験を行った。結果、最大で1日2.47%の減少が確認された。しかし、SMPsの消費量は極めて小さく、単体での摂取時にはほぼ消費されなかった。フンの分析では靴底成分の内、エチルセルロース(EC)は検出されなかったが、ポリエチレン等、他成分の分解は確認されなかった。従ってワームがECを微細化・分解した可能性が示唆した。
本研究の結果より、安価な環境保全型ゴミ処理のインフラの拡充が喫緊の課題であるが、ワックスワームでは、大量の靴廃棄物処理には大きな改善が必要であることが示唆された。