| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第72回全国大会 (2025年3月、札幌) 講演要旨
ESJ72 Abstract


一般講演(ポスター発表) P1-178  (Poster presentation)

ブナ落葉と材の分解速度への微生物要因の影響評価【O】
Evaluation of the Influence of Microbial Factors on the Decomposition Rate of Beech Litter and Wood【O】

*上野美桜(日本大学), 上村真由子(日本大学), 野中拓磨(日本大学), 松倉君予(日本大学), 澤山英太郎(日本大学), 韓慶民(森林総研), 飯尾淳弘(静岡大学)
*Mio UENO(Nihon Univ.), Mayuko JOMURA(Nihon Univ.), Takuma NONAKA(Nihon Univ.), Kimiyo MATUKURA(Nihon Univ.), Eitaro SAWAYAMA(Nihon Univ.), Qingmin HAN(FFPRI), Atsuhiro IIO(Shizuoka Univ.)

森林生態系は炭素貯留や生物多様性の維持に重要な役割を果たし、林床に堆積する落葉や枯死木は炭素固定や生物の生息環境の提供に寄与している。しかし、気候変動により21世紀末には有機物の滞留時間が減少し、炭素貯留機能の低下が懸念されている。有機物の分解には微生物群集が重要な役割を担い、その動態は分解速度やプロセスに影響を及ぼす。 そこで本研究は、環境の異なるブナ林において有機物の分解実験を実施することで、有機物分解速度に影響を与える制御要因を評価することと、分解過程における微生物動態を解明することを目的とした。ブナの落葉と材という異なる基質を用いて、群馬県水上演習林の1か所と新潟県苗場国有林の3か所において野外分解実験を行った。サンプルは2021年春に設置し、半年ごとに回収し、計4回回収した。落葉と材の重量変化から分解速度を算出し、菌類と細菌類のDNAコピー数や菌類のASVといった生物要因、試験地の地温、積雪日数、有機物の含水比といった環境要因、落葉と材といった基質の違いが、直接・間接的に分解速度に与える影響を明らかにした。地温は落葉の分解速度に直接的な正の影響を与えた。また、材の菌類の増殖に正の影響を与えることを通して分解速度に正の影響を与えた。積雪日数の減少は、含水比を低下させることを通して、落葉では細菌類、材では菌類の増殖を高め、分解速度に落葉では負、材では正の影響を与えた。また、半年ごとに4回収時期を評価したところ、半年間に落葉では4割程度、材では5割程度の菌類が入れ替わりながら、有機物分解という機能を発揮していた。有機物の分解速度は、環境要因、基質要因、生物要因が、直接・間接的に作用することによって制御されることが明らかになった。


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