| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第72回全国大会 (2025年3月、札幌) 講演要旨
ESJ72 Abstract


一般講演(ポスター発表) P1-180  (Poster presentation)

漂着海藻から作出したバイオチャーの散布が土壌に及ぼす影響【A】【O】
Effects of algal biochar applicaition on soil【A】【O】

*道具誠士(早稲田大学), 友常満利(玉川大学), 吉竹晋平(早稲田大学), 町田郁子(早稲田大学)
*Seiji DOGU(Waseda Univ.), Mitsutoshi TOMOTSUNE(Tamagawa Univ.), Shinpei YOSHITAKE(Waseda Univ.), Ikuko MACHIDA(Waseda Univ.)

 近年、気候変動の緩和策としてバイオチャーを用いた炭素隔離が注目されている。バイオチャーは、生物資源を低酸素条件下で炭化させたものであり、難分解であることから長期間の炭素隔離に有用とされ、土壌への散布による効果についても研究が進められている。一方、重要なCO₂吸収源のひとつに藻場などのブルーカーボン生態系が挙げられる。ブルーカーボンとは、海洋生態系に取り込まれた炭素のことであり、例えば藻場では多くのCO₂を吸収した海藻がやがて枯死して海底に残留することで炭素が貯留・隔離されるが、海岸などに漂着した海藻は分解されCO₂放出源となる。そこで本研究では、漂着海藻をバイオチャーに変換して安定的に炭素を隔離するという新たな手段の可能性を提示するために、海藻からバイオチャーを作出し、その特性や土壌への影響を明らかにすることを目的とした。

 本研究では、日本近海に多く生息しているアラメの漂着個体を用いて、異なる温度(350, 450, 550℃)でバイオチャーを作出し、元素分析、官能基の解析、pH、電気伝導度の測定を行った。また、森林土壌を用いたポット実験にて土壌微生物への影響を調べることで、バイオチャーの特徴を評価した。比較対象として、市販の木炭、もみ殻炭についても同様の実験を行なった。

 その結果、アラメバイオチャーは、熱分解温度の上昇に伴い難分解性が増すことが確認され、他の材料に比べて窒素含有率および電気伝導度が高いという特徴を有することがわかった。土壌ポット実験では、アラメバイオチャーを混合した土壌の培養28日目における土壌呼吸速度および微生物バイオマスが、木炭を施用した場合に比べ低い傾向がみられたが、これはもみ殻炭の場合と類似していた。これらの結果から、アラメバイオチャーは炭素隔離効果を持ちつつ、土壌への窒素やミネラルの供給源として、土壌改良にも役立つ可能性が示唆された。


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