| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第72回全国大会 (2025年3月、札幌) 講演要旨 ESJ72 Abstract |
一般講演(ポスター発表) P1-181 (Poster presentation)
バイオチャーは有機物を酸素制限条件下で熱分解して得られる炭化物であり、その炭素隔離効果が注目されている。その表面は多孔質で、比表面積も大きい。この微細孔が微生物の棲み処となるため、バイオチャーを土壌に施用すると、微生物による有機物分解や無機化作用を介した土壌改良効果が期待できる。微生物群集機能を評価するうえで非常に重要なパラメータの一つに微生物の量(バイオマス)があり、バイオチャーに定着した微生物のバイオマスを定量することは、土壌改良材としての有効性を評価する一助となる。しかし、現時点でバイオチャーに特化した微生物バイオマス測定法は確立されていない。そこで本研究では、①従来の土壌微生物バイオマス測定法がバイオチャーにも適用できるか検証し、②実際に森林土壌に散布した2種のバイオチャー(現地材を用いた自作木炭と市販木炭)における微生物バイオマスの経時変化を明らかにすることを目的とした。
微生物バイオマス測定法の検証では、土壌試料に対して広く用いられているクロロホルム燻蒸抽出法(CFE法)とATP(アデノシン三リン酸)法を用いた。各手法において、バイオチャーを対象とする際に問題となると予想された抽出操作に関わる諸条件を再検討し、微生物バイオマスを測定できるか調べた。その結果、いずれの手法も適用可能であったが、測定値のばらつきの小ささから、ATP法の方がより適していることが分かった。
コナラが優占する落葉広葉樹林において、現地材であるコナラから自作したバイオチャーと、市販の木炭粉末の2種のバイオチャーを散布し、一定期間ごとに回収し、前述のATP法を用いて微生物バイオマスを測定した。その結果、微生物バイオマスが経時的に増加していく様子が確認できた。また、現地材由来のチャーより市販のチャーの方がより多くの微生物が定着することが分かり、土壌改良材としてより有望であることが示唆された。