| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第72回全国大会 (2025年3月、札幌) 講演要旨
ESJ72 Abstract


一般講演(ポスター発表) P1-182  (Poster presentation)

小笠原諸島父島における亜熱帯性低木の根の呼吸速度と道管流および葉の蒸散速度の関係【O】
Relationships between root respiration, xylem flow, and leaf transpiration in the subtropical shrubs Hibiscus glaber and Rhaphiolepis umbellata.【O】

大薗真由(都留文科大学), 直井勝延(都留文科大学), 坂田剛(北里大学), 古平栄一(北里大学), 下川房男(香川大学), 石田厚(京都大学), *坂田(別宮) 有紀子(都留文科大学)
Mayu OZONO(Tsuru Univ.), Katsunobu NAOI(Tsuru Univ.), Tsuyoshi SAKATA(Kitasato Univ.), Eiichi KODAIRA(Kitasato Univ.), Fusao SIMOKAWA(Kagawa Univ.), Atsushi ISHIDA(Kyoto Univ.), *Yukiko BEKKU(Tsuru Univ.)

植物根の呼吸速度は、陸上生態系の炭素循環や炭素収支量を推定する際の重要な因子で、短期的には地温、長期的には成長量や呼吸基質量に影響を受ける。過去に発表者らは、葉の蒸散速度と根の呼吸速度の同時測定から「根の呼吸速度がこれらの要因だけでなく、葉の蒸散速度の変動とリンクして変動する現象」を発見した。このリンク現象が、過去に報告した冷温帯の樹種だけでなく、他の気候帯の樹種にも共通する一般性をもつならば、地球規模の炭素循環の推定モデルの改善に貢献すると考えられる。そこで本研究は、亜熱帯性低木3種を対象に、葉の蒸散速度と根の呼吸速度にリンク現象がみられるのか検討を行った。
 2024年8~9月に小笠原諸島父島の大神山尾根部に自生するテリハハマボウ、シャリンバイ、各2個体について、根の呼吸速度、幹・枝・根の道管流速、葉の光合成・蒸散速度の同時連続測定を行った。根の呼吸速度は光学式酸素濃度計(VisiFerm)を、幹の道管流速は樹幹流速計(SFM1)を、葉の光合成・蒸散速度はLI6400を、枝と根の道管流速はマイクロセンサー(共著者開発品)を用いて、10~24時間の連続測定をおこなった。また、テリハハマボウと近縁なオオハマボウのポット個体を用いて実験室内で同様に測定を行った。
 その結果、ポット個体のオオハマボウでは光合成・蒸散速度の変化に応じた根の呼吸速度の変動が見られたが、自生地のテリハハマボウおよびシャリンバイの根の呼吸速度は、日中大きく変動したが、地温や葉の蒸散速度、幹の道管流速と連動した傾向は見いだせなかった。一方で、根の道管流速と呼吸速度の間には連動性が示唆される結果が得られた。また、夜間の根の呼吸速度は日中に比べて低下したが、地温や根の道管流速では説明できない急激な上昇が複数回観察された。今後、測定精度をさらに向上させ、根の呼吸速度に影響を与える要因について検討してく必要がある。


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